富士山は「♪富士は日本一の山〜♪」と童謡にも歌われ、世界遺産にも登録されている魅力的な山です。
一生のうちに一度は、あるいは次の夏こそは富士山に登ってみようと思っている人もいらっしゃると思います。
でも、いざ実行に移すとなるとどうして良いかわからないことばかりでお困りではないでしょうか。
そこで今回は、事前にどれだけのことを知り、どれだけの持ち物や服装を揃え、どれだけの手続きをし、どれだけの準備をし、現地でどのように行動すれば富士登山を成功させられるかについて詳しく解説いたします。
目次
富士登山の魅力とリスク
ここでは、富士山とはどのような所で、富士登山に挑戦することが何を意味するかについてお話しいたします。
先ずは富士山や富士登山の魅力について、
- 日本一高い山
- 世界遺産に登録されている
- 日本百名山の一つ
- 日本本土で日の出時刻が一番早い
- 眺望が素晴らしい
- 影富士が見られるかも
- 登山道がよく整備されている
- 山小屋が多くある
- 救護所や避難所もある
等々、魅力は沢山あります。
一方で心得ておくべき富士登山のリスクとしては、
- 寒暖の差が大きい
- 空気(酸素)が薄い
- 紫外線が強い
- 天気が荒れると遮るものが無い
- 登山道に岩場や割れた溶岩が多くある
- 活火山である
- 救急車は山中には来てくれない
等が挙げられます。
日本人からも外国人からも人気が高い要因
特徴的な美しい形をしていて、信仰の山でもあり、日本一高い山として誰もが知っていて、一度は登ってみたいと思っている日本人も多くいる富士山は、日本でも人気が高い山です。
人気が高いため、登山道が整備されているし山小屋や救護所や避難所が多くあるため登山環境が整い、人気がより高まるという循環にもなっているようです。
そして、世界遺産にも登録されていて、世界的に有名な山の中で比較的容易に登れるため外国人からも人気が高い山です。
実は、富士山頂は日本で一二を争う日の出時刻が早い地点です。
日本一高い所で日本一早くご来光を拝めることを期待して富士登山を計画する人が多いことも、富士山の人気が高い理由の一つではないでしょうか。
富士山頂の日の出の時刻を下の表にお示しします。
7月上旬 | 4:20~4:30 |
7月下旬 | 4:30~4:40 |
8月上旬 | 4:40~4:50 |
8月下旬 | 4:50~5:00 |
9月上旬 | 5:00~5:00 |
※ 場合によっては、地面からではなく雲の向こうから、日の出の時刻よりも遅れて太陽が顔を出すこともあります。
樹林帯を抜ける標高約2,500m以上では視界を遮るものが何も無いため、天候に恵まれれば、素晴らしい眺望が見られることも富士登山の楽しみの一つです。
眺望とは少し違うかもしれませんが、時間帯と場所と天気の条件が揃えば美しいシルエットの影富士が見られるかもしれません。
富士山の気象
富士山の麓や登山口付近と頂上付近とでは気象の様子は大きく異なります。
なぜならば、富士山は日本で一番標高が高い山であり、また独立峰だからです。
なので、富士登山をする際は、晴・曇・雨・雪のみならず、気温、風、雷などにも留意すべきです。
標高が高いとは、気温が低いことを意味します。
一般に、標高が100m高くなると気温は0.6℃低くなります。
富士山頂上と下界との気温差は22℃程度あります。
下界の気温が40℃近い猛暑日でも、頂上付近の気温は20℃を下回る過ごしやすい気候です。
ですが、朝の最低気温が下界で25℃の場合、頂上付近の気温は3℃程度で真冬の寒さです。
なので、頂上でご来光を拝もうと思ったら、十分な寒さ対策が必要です。
独立峰とは、周りに遮るものが何も無いことを意味します。
遮るものが何も無いということは、悪天候時は身が危険にさらされることを意味します。
強い風が吹き付けることもよくあります。
斜面を上る強い風に乗って、雨がまるで下から降ってくるみたいなことも起こり得ます。
山では、強い風が吹き付けたり、雲が風に乗ってやって来たり去って行ったり、風が斜面を吹き上がったり吹き下ろしたり、上昇気流が発生したり、雷雲が発生したりと様々なことが起きることが、山の天気は変わりやすいと言われる要因になっています。
夏の富士山では雷の発生にも注意が必要です。
雷が発生しそうな時は山小屋に避難するか、登山を中止するのが賢明です。
夏は台風のシーズンでもあります。
遮るものが周りに何も無い富士山では、台風じゃなくても強い風が吹き付けます。
ましてや、台風の暴風雨の中で富士山を登るのは自殺行為です。
台風の前後は富士登山は中止して下さい。
つまり、雨や風や雷や台風が来ない日を選んで富士登山をして下さい。
富士山の天気予報
富士山頂上付近の天気予報は以下でチェックして下さい。
富士登山をする際の注意点、ルールやマナーなど
歩き始める前に、高地順応も兼ねて、先ず準備運動やストレッチ体操をして体を慣らしましょう。
なぜならば、登山口の標高が既にそれなりに高いため、登山口に着いてすかさず登り始めると高山病に近い症状になりかねないからです。
登山口に着いて車から降りると、下界よりも涼しく感じることでしょうが、低いのは気温だけでなく酸素濃度も低いと認識して下さい。
富士登山に限ったことではありませんが、そもそも登山とは、足元が悪い道を重い荷物を背負って長時間・長距離を歩くハードな運動です。
それに見合う体力やスタミナが必要です。
富士登山でどの程度の時間・距離を歩くかと言うと、山中一泊二日を要する行程だと認識して下さい。
朝家を出てお昼前後に登山口に着き徹夜で登ってご来光を拝んだら下山して帰宅するという、いわゆる弾丸登山は無謀です。
弾丸登山は、身体的にもスケジュール的にも無理が大きいので、慎んで下さい。
利用する登山口によって歩行距離や標高差は異なりますが、30階建て(高さ約100m)のタワーマンションを、数kgの荷物を背負って、一階から屋上まで階段で約20往復するのに相当する運動をしに行くと覚悟して下さい。
上りでは、心臓はバクバク息はゼーゼーで、汗だくになるほど暑くなることもよくあります。
しかし、標高が高くなるほど気温は低くなります。
頂上付近の朝の最低気温は真冬並の寒さです。
つまり、ハードな運動である一方で、じっとしていると寒さにさらされます。
暑さ寒さの変動が激しい環境下で過ごす活動だという認識で服装や持ち物を選ぶ必要があります。
自分がかいた汗や雨で濡れて身体を冷やさないように、速乾性のウエアが必須です。
寒いと、人間も辛いですが、植物も生えません。
なので、登山道は岩場や砕けた溶岩からなる石ころや砂のような、足元の悪い所を歩くことになります。
他にも、標高が高くなるほど空気(酸素)も薄くなります。
標高3,000mを超えると高山病に注意が必要です。
また、標高が高くなるほど紫外線も強くなります。
肌の露出部分の日焼け予防のみならず、目も傷めないようにサングラスをするなど対策が必要です。
一般的にさほど認識されていませんが、実は、登山に限らず坂道や階段を歩く時でも、上りよりも下りの方が難易度や危険度や足に掛かる負荷が大きいです。
心肺的な負荷は上りの方が大きいですが、足に掛かる負荷は下りの方が大きいです。
頂上でご来光を拝んでそれで済みではありません。
下山口まで自分の足で歩き通し無事に帰宅するところまでがミッションだと思って下さい。
街中とは違って、救急車は山中には来てくれません。
ケガをせず、病気を発症させず、全行程を自分の足で歩き通す覚悟で臨んで下さい。
ゴミ収集車も山中までは回って来ません。
登山をする際はゴミは家まで持ち帰るのが当然だと心得て下さい。
それから、富士山は活火山の一つです。
噴火するかもしれないという認識を持って登山を計画して下さい。
富士登山における禁止事項もあります。
動植物の採取、溶岩や石の持ち出しや移動、落書き、テントの設営やたき火、ペット等の放し飼いは禁止されています。
誘導ロープにも触れないで下さい。
登山では、原則、上りが優先です。
上りルートと下りルートの共通区間において、狭い所ですれ違う場合は、原則として上りを優先して下さい。
登山道外に気になる物(珍しい地形や石や植物や動物など)を見付けたり、登山道が混雑している所で無理に追い越そうとしたりして、登山道を外れて歩くことはしないで下さい。
登山道を外れて歩くと、生態系を破壊したり落石を起こしたりしかねませんので。
もしも落石を起こしてしまったり落石を発見した場合は、「落石!」や「らーく らーく らーく!」とすぐに大声で叫んで、周りの人たちに知らせて下さい。
休憩中も、大声で話したり騒いだりしないで下さい。
特に夜間に山小屋の近くでは静かにして下さい。
山小屋のトイレを借りたり公衆トイレを使う時等、施設をきれいに使って下さい。
富士登山を成功させる計画や準備の手順
ここでは、富士登山に出掛ける前にやるべき様々なことについて、その手順を簡単にお話しいたします。
各項目についての具体的なことは後ほど改めて解説いたしますので、そちらを参考に進めて下さい。
富士登山を安全に順調に成し遂げるには、しっかり計画を立て準備することがとても大切です。
富士登山に行こうと思ったら、出発前にやるべきこととして
- 登山日程の決定
- 登るルートの選定
- 自宅と登山口の間の交通手段の決定およびチケットの予約
- 山小屋の予約
- 持ち物・装備の準備
- 保険への加入
- 登山届(登山計画書)の作成
- 体力トレーニング
等々、沢山あります。
富士山の開山期間は限られていますので、後述する開山期間の範囲内で登る日程を決めて下さい。
山中一泊二日の日程を要する登山と認識して計画を立てて下さい。
週末は混雑するので、混雑を避けるなら平日に行く方がおすすめです。
また、梅雨開けから立秋までが天気が比較的安定するので狙い目かもしれません。
富士登山するルートは4つあります。
後述いたしますが、ルートによって特徴や歩行時間や登山口までの行き方等も異なります。
4つのルートを比較して、ご自分に合ったルートをお選び下さい。
日程とルートが決まれば、それに合わせて計画を詰めて行けばOKです。
次は、自宅と登山口の間の交通手段を決めます。
公共交通機関を使う場合、予約制ならばチケットを予約することになります。
マイカーで行く場合は、マイカー規制期間中かどうかを確認し、それに応じて対処します。
富士登山ツアーに参加することを検討しても良いかもしれません。
と言うのは、ツアーに申し込めば、登山口までの往復の交通手段や山小屋の予約や保険への加入手続きや登山届の作成および提出等を自分でしなくて済み、ガイドが付くものもあるからです。
あなたがツアー参加者たちと同じペースで行動することができるならば、ツアーも有力な選択肢になるかもしれません。
次は山小屋を予約します。
ここまでは、日程とルートが決まったらなるべく早く予約することをおすすめします。
と言うのは、希望通りの予約が取れないと、計画を立て直す必要に迫られるかもしれないからです。
次は、必要な持ち物や装備を揃え、保険に加入します。
服装や持ち物・装備等は、あなたが既に持っている物や有り合わせの物で間に合う物もあれば、登山専用品でなければ用を成さない物もあります。
辛い思いをするだけで済まず最悪の場合は命に関わりますので、高いと思うかもしれませんが、必要な物は高機能高性能の登山専用品をお使い下さい。
保険は、万が一、登山中にケガをして病院にかかる場合や遭難して捜索や救助活動が行われた場合に、その費用を賄うために加入しておくべきです。
ここまで済ませれば、登山届(登山計画書)を作成するために必要なことは全て確定しているはずです。
登山届(登山計画書)は、提出するだけでなく、紙にプリントアウトした物を登山中に携行し、計画通りに行動できているかを適宜確認して下さい。
言及する順番は最後になってしまいましたが、体力トレーニングも重要です。
なぜならば、自力で無事に登って降りて来れるだけの体力があることが大前提だからです。
体力は一朝一夕で身に付くものではありませんので、日頃から継続的にトレーニングをして富士登山を可能にする体力を養って下さい。
富士登山できる期間
開山日は山梨県側から登るルート(吉田ルート)と静岡県側から登るルート(須走ルート、御殿場ルート、富士宮ルート)とで異なりますが、閉山日は全て統一されています。
登山ルート | 開山期間 |
---|---|
吉田ルート | 7月 1日〜9月10日 |
須走ルート | 7月10日〜9月10日 |
御殿場ルート | 7月10日〜9月10日 |
富士宮ルート | 7月10日〜9月10日 |
お鉢巡り歩道 | 7月10日〜9月10日 |
これ以外の期間は登山道は閉鎖されます。
なぜならば、これ以外の期間は、特に標高が高い所は気温が低かったり雪が降ったりして登山するには適さないからです。
また、開山日は、残雪等登山道の状況によって遅れることがあります。
富士登山口および富士登山ルート
富士登山するルートは主として4つあります。
それらは、吉田ルート、須走ルート、御殿場ルート、富士宮ルートの4つです。
どのルートを使っても一泊二日、あるいはそれ以上(ご自宅と登山口との間の所要時間にもよる)を要すると認識して下さい。
富士山では、登山道の標識の表記やデザイン等は統一されています。
また、4つの登山ルートは、それぞれに異なる識別色が割り当てられています。
識別色を活用して、分岐点等であなたが進むべき道を的確に選択して下さい。
それぞれのルートの識別色、登山口、アクセス、歩行距離、歩行時間、途中の山小屋やトイレ等の施設の数、難易度、ご来光が見られる場所、および特徴などを下の表にまとめました。
富士登山ルート | 吉田ルート | 須走ルート | 御殿場ルート | 富士宮ルート |
---|---|---|---|---|
ルート識別色 | 黄 | 赤 | 緑 | 青 |
登山口名 | 富士スバルライン五合目 | 須走口五合目 | 御殿場口新五合目 | 富士宮口五合目 |
登山口所在地 | 山梨県富士吉田市 | 静岡県小山町 | 静岡県御殿場市 | 静岡県富士宮市 |
アクセス、 マイカー規制、 駐車場 | 鉄道やバスを利用の場合は、富士急行線の富士河口湖駅または富士山駅から富士急行バスに乗り換え。 新宿高速バスターミナル、夏期限定で横浜駅、御殿場駅、日吉駅、センター北駅、たまプラーザ駅、市が尾駅より高速バスあり。 マイカー規制期間中のアクセスは、東富士五湖道路富士吉田IC付近にある富士山パーキング(山梨県立北麓駐車場)に駐車し、シャトルバスに乗り換え。 | 鉄道やバスを利用の場合は、JR御殿場線の御殿場駅や小田急電鉄の新松田駅から富士急行バスに乗り換え。 マイカー規制期間中のアクセスは「道の駅すばしり」近くの須走多用途広場(無料)に駐車し、シャトルバスまたはタクシーに乗り換え。 | 鉄道やバスを利用の場合は、JR御殿場線の御殿場駅から富士急行バスに乗り換え。 マイカーの場合は富士山スカイライン(無料)を利用し御殿場口新五合目にある駐車場(無料)までマイカー乗り入れ可(マイカー規制されていない)。 | 鉄道やバスを利用の場合は、東海道新幹線の新富士駅やJR東海道線の富士駅やJR身延線の富士宮駅から富士急静岡バスに、東海道新幹線の三島駅やJR御殿場線の裾野駅から富士急シティバスに乗り換え。 マイカー規制期間中のアクセスは水ヶ塚公園駐車場に駐車し、シャトルバスまたはタクシーに乗り換え。 |
登山口の標高 | 2,300m | 2,000m | 1,450m | 2,400m |
ルートの位置 | 富士山の北側 | 富士山の北東側 | 富士山の南東側 | 富士山の南側 |
上りルート距離(km)/ 歩行時間目安(時間-分) | 7.5km/ 6時間10分 | 7.8km/ 5時間10分 | 11.0km/ 6時間40分 | 5.0km/ 4時間20分 |
下りルート距離(km)/ 歩行時間目安(時間-分) | 7.6km/ 4時間05分 | 6.2km/ 2時間40分 | 8.5km/ 3時間00分 | 5.0km/ 2時間05分 |
登山口頂上→剣ヶ峰 歩行時間目安 | 50分 | 50分 | 20分 | 20分 |
剣ヶ峰→登山口頂上 歩行時間目安 | 45分 | 45分 | 15分 | 15分 |
山小屋 | 合計19=上り18+下り4‐双方3 うち8は須走ルートと共同利用 | 合計15=上り14+下り10‐双方9 うち8は吉田ルートと共同利用 | 合計6=上り6+下り5-双方5 うち1は富士宮ルートと共同利用 | 8 うち1は御殿場ルートと共同利用 |
公衆トイレ | 合計4=上り3+下り4-双方3 うち1は須走ルートと共同利用 | 合計2=上り2+下り2-双方2 うち1は吉田ルートと共同利用 | 合計2=上り2+下り2-双方2 うち1は富士宮ルートと共同利用 | 2 うち1は御殿場ルートと共同利用 |
救護所 | 合計3=上り3+下り1-双方1 | なし | なし | 1 |
難易度 | ☆☆☆ | ☆☆☆ | ☆☆☆☆ | ☆☆☆ |
利用登山者の多い順位 | 1 | 3 | 4 | 2 |
ご来光が見られる場所 | 五合目より上のどこからも | 樹林帯を抜ける七合目付近より上ではどこからも | ルート上のどこからも | 新七合目から上 |
特徴、備考 | 利用する登山者数が最も多い人気のルート。 六合目から上は登山道と下山道は別ルート。 登山道には山小屋が多いが、下山道には山小屋がない。 本八合目で須走ルートと合流し、登山道が渋滞することがある。 下山道は、八合目まで須走ルートと同じ。 五合目で必要な装備のほとんどが購入可能。 | 七合目付近から下は樹林帯の中。 樹林帯を抜ける七合目付近より上ではどこからでもご来光や陰富士が見られる。 一部区間を除き、登山道と下山道は別ルート。 本八合目で吉田ルートと合流し、登山道が渋滞することがある。 下山道は、八合目まで吉田ルートと同じ。 下山道の七合目から砂払五合目までは「砂走り」と呼ばれる火山砂利の道。 | 4ルートの中で登山口の標高が最も低く、頂上までの標高差が最も大きく、頂上までの距離や歩行時間が最も長い。 4ルートの中で登山者数が最も少なく山小屋も少ないため、救助を求めたい場合などでも周囲に登山者がいないことがあり不便だが、静かな登山が楽しめる。 七合目から下は登山道と下山道は別ルート、七合目から頂上までは登山道と下山道が同じ。 どこからでもご来光と陰富士が見られる。 | 4ルートの中で出発地点の標高が最も高く、頂上までの距離や歩行時間が最も短い。 比較的急傾斜で岩場がやや多い。 吉田ルートに次いで登山者が多く、富士山登山者全体の約3割が利用。 全区間を通して登山道と下山道が同じ。 最高地点の剣ヶ峰までの最短ルート。 |
以下で各登山ルートについて解説いたします。
吉田ルート
初心者には最もおすすめのルートです。
利用する登山者数が最も多い人気のルートです。
山小屋や救護所等の施設が最も多いルートです。
六合目から上は登山道と下山道が別ルートになっています。
登山時の本八合目より上と、下山時の八合目までは須走ルートと同じ道を歩きます。
そのためこの区間は、特に週末の夜明け前の頂上付近の上り道では、登山道が渋滞することがあります。
下山道八合目の須走ルートとの分岐点に注意が必要です。
登山ルート頂上から最高地点の剣ヶ峰まで足を延ばすと、90分程度更に歩くことになりますが、それが必然的にお鉢巡りをしていることにもなります。
7月はじめは残雪のため下山道を利用できないことがあるので、行く前に下山道の状況や下山道として利用できる場所等を六合目富士山安全指導センター(電話:0555-24-6223=7月1日~9月11日)で確認して下さい。
吉田ルートでは、装備が不備な場合は、五合目で必要な装備のほとんどが購入可能です。
詳細は山梨県富士山五合目総合管理センター
5月〜10月は電話:0555-72-1477(9:00~16:30)
11月〜4月は電話:0555-22-3355(9:00~17:00 土・日・祝日、年末年始除く)
7月1日8:00~9月11日20:00は電話:090-5190-0167
にお問い合わせ下さい。
吉田ルートへのアクセス情報とマイカー規制情報
鉄道やバスを利用する場合は、富士急行線の富士河口湖駅または富士山駅から富士急行バスに乗り換えます。
高速バスが、新宿高速バスターミナルや、横浜駅・御殿場駅や、日吉駅・センター北駅・たまプラーザ駅・市が尾駅から出ています。
マイカーを利用する場合は、富士スバルラインのマイカー規制期間外は、富士スバルラインを利用して登山口(富士スバルライン五合目)の駐車場まで行くことができます。
富士スバルラインのマイカー規制期間中のアクセスは、東富士五湖道路富士吉田IC付近にある富士山パーキング(山梨県立北麓駐車場)に駐車し、シャトルバスに乗り換えます。
吉田ルートの山小屋情報
吉田ルート登山口周辺の天気予報
吉田ルート登山口(富士スバルライン五合目)や吉田ルートが通っている山梨県富士吉田市の天気予報は以下のサイトでチェックして下さい。
また、富士山頂上付近の天気予報は以下でチェックして下さい。
須走ルート
4ルートの中で標高が最も高い所(七合目近く)まで樹林帯の中を歩くルートです。
そのため、樹林帯の中(五合目から七合目近くまで)を歩く際、日中は日差しが遮られるという恩恵を得られます。
下山道の七合目から砂払五合目までは「砂走り」と呼ばれる火山砂利の道を下ります。
砂払五合目から下は樹林帯に入り日没を過ぎると暗くなるため、ヘッドライトは必須で、道に迷わないように注意が必要です。
樹林帯より上ではどこからでもご来光や影富士が見られます。
登山時の本八合目より上と、下山時の八合目までは吉田ルートと同じ道を歩きます。
そのためこの区間は、特に週末の夜明け前の頂上付近の上り道では、登山道が渋滞することがあります。
登山ルート頂上から最高地点の剣ヶ峰まで足を延ばすと、90分程度更に歩くことになりますが、それが必然的にお鉢巡りをしていることにもなります。
7月はじめは残雪のため、下山道を利用できないことがあります。
詳細は富士山須走口インフォメーションセンター(小山町観光協会)
電話:0550-76-5000
にお問い合わせ下さい。
須走ルートへのアクセス情報とマイカー規制情報
鉄道やバスを利用する場合は、JR御殿場線の御殿場駅や小田急電鉄の新松田駅から富士急行バスに乗り換えます。
マイカーを利用する場合は、ふじあざみラインのマイカー規制期間外は、ふじあざみラインを利用して登山口(須走口五合目)の駐車場まで行くことができます。
ふじあざみラインのマイカー規制期間中のアクセスは、道の駅すばしり近くの須走多用途広場(無料)に駐車し、シャトルバスまたはタクシーに乗り換えます。
ちなみに、「須走多用途広場」のすぐ近くに、よく似た名前の「須走多目的広場駐車場」という所がありますが、両者は別物です。
または、小山町観光スポーツ交流課
電話:0550-76-6114
にお問い合わせ下さい。
須走ルートの山小屋情報
須走ルート登山口周辺の天気予報
須走ルート登山口(須走口五合目)や須走ルートが通っている静岡県小山町の天気予報は以下のサイトでチェックして下さい。
また、富士山頂上付近の天気予報は以下でチェックして下さい。
御殿場ルート
4ルートの中で登山口の標高が最も低く、頂上までの標高差が最も大きく、傾斜は緩いですが、4ルートの中で頂上までの距離や歩行時間が最も長いルートであり、健脚向きです。
4ルートの中で登山者数が最も少なく山小屋等の施設も少ないため、救助を求めたい場合などでも周囲に登山者がいないことがあります。
不便ですが、その反面、静かな登山が楽しめるルートでもあります。
ルート上のどこからでもご来光と陰富士が見られます。
六合目で、宝永火口を経て富士宮ルートへ至る宝永遊歩道が分岐しています。
七合目から下は登山道と下山道は別に、七合目から頂上までは登山道と下山道が同じになっています。
下山道の七合目からは「大砂走り」と呼ばれる火山砂利の道を下ります。
詳細は、
御殿場市役所 観光交流課
電話:0550-82-4622
または、
静岡県交通基盤部道路局道路保全課
電話:054-221-2752
にお問い合わせ下さい。
また、開山期間中は登山口(御殿場口新五合目)にマウントフジトレイルステーション(通称トレステ)が開設され、現地で登山情報を得ることができます。
御殿場ルートへのアクセス情報とマイカー規制情報
鉄道やバスを利用する場合は、JR御殿場線の御殿場駅から富士急行バスに乗り換えます。
マイカーを利用する場合は、富士山スカイライン(無料)を利用し登山口(御殿場口新五合目)の駐車場(無料)までマイカーで行くことができます。
御殿場ルートでは、例年、登山口周辺のマイカー規制はされていません。
御殿場ルートの山小屋情報
御殿場ルートにある各山小屋の電話番号やWebページを表にまとめました。
ご活用下さい。
山小屋名 | 場所 | 電話番号 | WebページURL |
---|---|---|---|
大石茶屋 | 新五合目 | 0550-89-2941 090-8955-5076 | |
半蔵坊 | 新六合目 | 090-2745-2590 090‐4853‐8798 | https://hanzobo.main.jp/ |
わらじ館 | 七合四勺 | 090‐4853‐8798 | https://warazikan.main.jp/ |
砂走館 | 七合五勺 | 0550-89-0703 090-3155-5061 | http://www.sunabashirikan.co.jp/ |
赤岩八合館 | 七合九勺 | 0550-89-0703 090-3155-5061 | https://www.fujisan-akaiwa8go.jp/ |
頂上富士館 | 登山口頂上 | 090-3301-3512 | https://fujisanchou.com/ |
御殿場ルート登山口周辺の天気予報
御殿場ルート登山口(御殿場口新五合目)や御殿場ルートが通っている静岡県御殿場市の天気予報は以下のサイトでチェックして下さい。
また、富士山頂上付近の天気予報は以下でチェックして下さい。
富士宮ルート
4ルートの中で登山口の標高が最も高く、頂上までの距離や歩行時間が最も短いルートです。
最高地点の剣ヶ峰までの最短ルートでもあります。
ですが、比較的急傾斜で岩場がやや多いルートです。
登山初心者であっても体力(脚力や持久力やバランス感覚)が優れた人には狙い目のルートかもしれません。
吉田ルートに次いで登山者が多く、富士山登山者全体の約3割が利用するルートです。
全区間を通して登山道と下山道が同じルートのため、道が混雑することがあります。
六合目で、宝永火口を経て御殿場ルートへと至る宝永遊歩道が分岐しています。
詳細は富士宮口五合目にある富士山総合指導センター
電話:0544-22-2239
開山期間中は電話:090-2182-2239
にお問い合わせ下さい。
富士宮ルートへのアクセス情報とマイカー規制情報
鉄道やバスを利用する場合は、東海道新幹線の新富士駅やJR東海道線の富士駅やJR身延線の富士宮駅から富士急静岡バスに、東海道新幹線の三島駅やJR御殿場線の裾野駅から富士急シティバスに乗り換えます。
マイカーを利用する場合、開山期間中は連続してマイカー規制されるため、登山口(富士宮口五合目)の駐車場までマイカーで行くことはできません。
マイカーを利用する場合のアクセスは水ヶ塚公園駐車場に駐車し、シャトルバスまたはタクシーに乗り換えます。
富士宮ルートの山小屋情報
富士宮ルートの天気予報
富士宮ルート登山口(富士宮口五合目)や富士宮ルートが通っている静岡県富士宮市の天気予報は以下のサイトでチェックして下さい。
また、富士山頂上付近の天気予報は以下でチェックして下さい。
お鉢巡り
お鉢巡り(おはちめぐり)とは、富士山山頂の火口の周りを一周することです。
ルート上に最高地点の剣ヶ峰もあります。
一周約3km、歩行時間の目安は90分ほどです。
開通期間は、原則、7月10日~9月10日ですが、気象条件等により、通行できない場合もあります。
詳細は 富士登山オフィシャルサイト でご確認下さい。
自然の造形物の他に、山小屋4軒、売店1軒、公衆トイレ2箇所、浅間大社奥宮や久須志神社、富士山頂郵便局等もあります。
突風が吹きやすく、濃霧など天候の悪い時は危険です。
剣ヶ峰へ至る馬の背は滑りやすいため、特に下り方向(反時計回り)に進む場合は注意して下さい。
天候や体調を考慮し、下山の体力を残しておく必要があります。
富士山頂上付近の天気予報は以下でチェックして下さい。
富士登山する際の服装や持ち物
富士登山に行く際の服装や持ち物・装備等は、あなたが既に持っている物や有り合わせの物で間に合う物もあれば、登山専用品でなければ用を成さない物もあります。
高機能高性能の登山専用品はそれなりに高価だと思います。
自分は登山初心者だから、あるいは、今後登山に行く計画は無いからという理由で廉価品で済ませたくなる気持ちもわかります。
ですが、あなたの現状を基準にして装備等を選ぶのは間違っています。
なぜならば、行き先が上級レベルの山だからです。
悪条件の中でも行動せざるを得ない場合も想定した道具選びが必須です。
あなたが初心者だからと言って自然は手加減してくれません。
高機能高性能の登山専用品ならば支障なく対応できる状況でも、廉価品は無用の長物になってしまうこともあり得ます。
むしろ、経験の少なさやスキルの拙さを高機能高性能の道具を使うことによって補うという考え方で臨んで下さい。
富士登山をするのに最適な服装や持ち物一式について、こちらの記事 で詳しく解説しています。
是非ご覧下さい。
富士登山する際の主要な持ち物や装備
富士登山をするということは、上級レベルの登山をすることを意味します。
ですから、以下の品々だけは、お持ちでないならば、上級の山を歩くに相応しい物を新調して下さい。
それに見合う価値が十分に得られる物だけを厳選しました。
- 靴底が固いハイカットまたはミドルカットの登山靴とそれ専用の登山用靴下
- 防水透湿性能に優れた上下セパレートタイプのレインウェアを上下とも
- ウエストストラップも付いている容量30リットル程度のリュックサックとそれ専用のレインカバー
- 速乾性の衣類
- 防水仕様のヘッドライト
- 富士山山域が収まっている地図とコンパス(方位磁針)
以上の主要な持ち物や装備について、以下で順番にご説明いたします。
これらも含めて、富士登山をする際に必要十分な服装や持ち物リストは後ほどお示しいたします。
ちなみに、登山用品は高価なため、出費をなるべく抑えようと思う気持ちもわかります。
装備費用を安く抑える方法の一つに、スペック(仕様・機能・性能)を落とすという選択肢も無い訳ではありません。
ですが、それで済まされる場合と済まされない場合があります。
それでは済まされない装備に関しては、定価で買えば高額の出費になるかもしれませんが、ハイスペック品をご使用下さい。
具体的なアイテムについては、こちらの記事 をご覧下さい。
その上で、装備費用を抑える方法はございます。
具体的な方法については、こちらの記事 をご覧下さい。
登山靴と登山用靴下
富士登山では、冷えた溶岩の岩場やそれが砕けた砂利道等を歩きます。
靴底が十分に固くアッパーが十分に丈夫なハイカットまたはミドルカットの登山靴じゃないと耐えられません。
そして、この登山靴専用の厚手または中厚手の登山用靴下も一緒に揃えます。
登山用靴下は、履き口が登山靴の履き口よりも高い物を選びます。
そして、この登山用靴下を履いた足に合う登山靴を選びます。
富士登山に適した登山靴のおすすめは こちらの記事 をご覧下さい。
靴下のおすすめは こちらの記事 をご覧下さい。
防水透湿性能に優れたレインウェア
山の天気は変わりやすいと言われる通りで、富士登山においてもレインウェアは必須です。
防水透湿性能に優れた上下セパレートタイプのレインウェアを上下ともセットで準備して下さい。
なぜならば、富士山のように雨風が強い所で汗だくになるほどの激しい運動をすることもあるからです。
外からの雨水の侵入を防ぐと同時に、内側で発生する汗を逃がすことの両方の機能が求められるからです。
そして、呼び名はレインウェアかもしれませんが、「一番外側に身に着ける、雨具にもなる防風防寒着」という使い方をする装備だとご理解下さい。
雨が降っている時しかレインウェアを着てはいけない、というルールがある訳ではありません。
風が吹く中で、ウインドブレーカー代わりに着ることもできます。
ご来光を待つ間、防寒着として重ね着するすることもできます。
レインウェアは富士登山に必須のアイテムです。
富士登山に適したレインウェアのおすすめは こちらの記事 をご覧下さい。
ウエストストラップ付きのリュックサックとレインカバー
富士登山では、足元が不安定な所をバランスを取りながら進んだり、大きな段差の所をよじ登ったりすることもあります。
そんな場面で荷物が背中で動くと、歩きづらかったり危険だったりします。
それを解決するのが、ウエストストラップ付きのリュックサックです。
リュックサックの一つや二つくらいお持ちの方もいらっしゃると思います。
ですが、ショルダーストラップだけでなく、ウエストストラップも付いているリュックサックが富士登山では必須です。
リュックサックの容量は30リットル程度の物が適しています。
また、雨に備えて、リュックサックの容量に見合ったレインカバーも必須です。
物によっては、専用のレインカバーが付属しているリュックサックもあり、お得感があります。
富士登山に適したリュックサックのおすすめは こちらの記事 をご覧下さい。
どれも専用のレインカバーが付属している物ばかりです。
速乾性の衣類
富士登山をすると、大量の汗をかくこともありますし、雨に降られることもあるかもしれません。
そのような状況下で身に着ける物には、特に素肌に直接触れる物ほど、速乾性が重要です。
なぜならば、速乾性が無いと、衣類にいつまでも残っている水分によって体温がどんどん奪われ、最悪の場合は死に至るからです。
速乾性がある素材の代表例はポリエステルです。
ポリエステル100%の肌着やジャージ等は、(デザインはさておき)素材としてはおすすめの衣類です。
あなたがこれらの衣類を既にお持ちなら、新調せずに済ませられるかもしれません。
逆に、絶対に避けねばならないのが木綿素材の衣類です。
なので、普段から着慣れているからと言って、木綿製の肌着やジーパン等を富士登山で着るのは論外です。
富士登山に適したインナーのおすすめは、 こちらの記事 をご覧下さい。
富士登山に適したシャツ(トップス)のおすすめは、 こちらの記事 をご覧下さい。
富士登山に適したパンツ(ボトムス)のおすすめは、 こちらの記事 をご覧下さい。
その他重ね着する物も含め、富士登山で身に着ける衣類全般のおすすめは、 こちらの記事 をご覧下さい。
防水仕様のヘッドライト
たとえ日帰り登山だとしても、あるいは、夜は山小屋に泊まり明るい時間帯しか山道を歩かない計画だとしても、ヘッドライトは必須です。
なぜならば、登山では、予定外の状況に直面し得ることも想定した持ち物選びが基本だからです。
また、夜中に山小屋内で使う可能性もあるからです。
日没後や日の出前に暗い山道を歩くならば、ヘッドライトが無ければ大いに危険です。
その際、大量の汗をかくこともありますし、雨に降られる可能性もあります。
その対策として、防水仕様のヘッドライトを、予備電池とともに、持ち物に加えて下さい。
ヘッドライトのおすすめは こちらの記事 をご覧下さい。
富士山山域地図とコンパス(方位磁針)
たとえ優秀で信頼できるガイドさんと全行程を共にする計画だとしても、地図とコンパス(方位磁針)のセットは必携です。
なぜならば、登山では、予定外の状況に直面し得ることも想定した持ち物選びが基本だからです。
あなたが歩こうとしている山域の少し外側までが収められた地図を、コンパス(方位磁針)と一緒に携行して下さい。
そして、道に迷わず、山中を安心して行動できるように準備して下さい。
コンパス(方位磁針)のおすすめは こちらの記事 をご覧下さい。
富士登山する際の持ち物リスト
これまでご説明した物も含めて、富士登山をする際に必要十分な服装や持ち物等一式をまとめたリストを作成いたしました。
すぐ下のボタンから、その下の表と同じ内容のPDF形式のファイルを閲覧およびダウンロードできます。
アイテム※1 | 必要性※2 | 仕様・機能・性能,数量,持ち運び方,注意点等 | |
---|---|---|---|
富士登山に必須の服装・装備その1 = 入山時に身に着ける物※3 | ※1 アイテム名をクリック(タップ)するとその説明に移動します。 | ||
1:肌着(上) | ★★★ | 必ず吸汗速乾性の物を。ポリエステル製やメリノウール製がおすすめ、綿製は厳禁。半袖でも長袖でもOK。 | |
2:肌着(下) | ★★★ | 必ず吸汗速乾性の物を。ポリエステル製やメリノウール製がおすすめ、綿製は厳禁。ショートタイプでOK。 | |
3:行動着(上)=長袖シャツ | ★★★ | 必ず速乾性の物を。ボタン式orスライドファスナー式で前開き仕様の長袖シャツ。襟やポケット付きの物がお勧め。 | |
4:サポートタイツ | ★★★ | 必ず速乾性の物を。サポート系のロングタイプの物を。夜、山小屋で寝る時は脱ぐベシ。 | |
5:行動着(下)=長ズボン | ★★★ | 必ず速乾性とストレッチ性がある物を。いわゆるジャージもOK。 | |
6:登山用靴下 | ★★★ | 厚みは厚手の物を、丈は靴の履き口よりも上に来る長さの物を。速乾性も保温性も備えたウール素材の物がお勧め。 | |
7:登山靴(トレッキングシューズ) | ★★★ | ハイカットまたはミドルカットであること。靴底は十分に硬く溝が深いこと、アッパーは防水透湿性があること。サイズは、登山用靴下を履いた足に合わせ、少し余裕があること。 | |
8:サングラス | ★★★ | 紫外線カット率99%以上、UV400以上をクリアする物。夜、山小屋で寝る時に入れるケースも持参のこと。 | |
9:日本手拭 or マイクロファイバータオル or バンダナ | ★★★ | これらをどんな組合せでも良いので2枚程。木綿素材のタオルはNG。それよりも薄い日本手拭いや、乾きやすい素材でできたマイクロファイバータオルがお勧め。 | |
10:帽子 | ★★★ | あご紐付きか、付いていなければ帽子と服の襟とをつなぐ紐も一緒に。キャップでもハットでも、持っている物でOK。 | |
11:腕時計 | ★★★ | 防水仕様でアラーム機能付きがお勧め。 | |
12:登山計画書 | ★★★ | 同行者全員の住所氏名年齢と緊急連絡先と行程と携行品を記載。自身携行用、登山口提出用、非常時用の合計3部。自身携行用は適当な大きさに折りたたみ、ビニール袋に入れた上で、服のポケットに入れて持ち運ぶ。 | |
13:筆記用具 | ★★★ | 書く物は氷点下でも水に濡れた紙にでも書ける黒の油性ボールペン。服のポケットに入れて持ち運ぶ。書かれる物は自身携行用登山計画書の裏。 | |
14:コンパス(方位磁針) | ★★★ | オリエンテーリングでよく使われるベースプレートコンパスを。すぐに使えるように紐で首から下げて持ち運ぶ。 | |
15:手袋※3 | ★★★ | 滑り止め加工された軍手でOK。他に、雨天時に備えてレイングローブも予備として持つ。 | |
16:リュックサック※3 | ★★★ | 容量30L前後、ウェストストラップとコンプレッションストラップ付き、体格に合ったサイズの物。レインカバーも。 | |
富士登山に必須の持ち物・装備その2 = 登山中に必ず使う物 | |||
17:地図 | ★★★ | 紙に印刷され富士山山域の少し外側までが収められたた地図。ガイド本に付属の地図でもOK。磁北線を1km間隔で予め引いておく。スマホの地図アプリは電池が消耗すると使えないのでNG。 | |
18:行動水(及び非常水) | ★★★ | 量は非常水として常時確保しておく500mlも含め出発時に1.5~2L。残りが500mlに近付いてきたら山小屋で購入して補充。入れ物は水筒に移し替えても、ペットボトル入りのままでもOK。ハイドレーションの活用もOK。中味は単なる水でも麦茶でもOK、スポーツ飲料や経口補水液も◎。コーヒー、紅茶、緑茶、アルコール飲料、炭酸飲料はダメ。 | |
19:行動食(及び非常食) | ★★★ | 例としてはチョコレート、キャラメル、ようかん、飴、塩飴、せんべい、あられ、梅や柑橘類が含まれるもの、ドライフルーツ、ゼリー飲料、魚肉ソーセージ、ナッツ類、おにぎり、パン等々。条件はカロリーが高く、調理不要でそのまま食べられ、保存が効き、栄養バランスを補い合え、あなたの好物で、持ち運びやすく、汚れた手でも食べられる形状であること。量は、一泊二日の行動中に食べる二食分と非常食としての一食分の合計三食分。非常食を行動食とは別々にしても一緒にしてもどちらでもOK。 | |
20:100円玉 | ★★★ | 30枚(3,000円分)程度。内訳はトイレ使用料に1,000円程度、飲み物の追加購入に2,000円程度使う見込み。金剛杖に焼き印を押してもらう計画なら、一回200~500円×回数に相当する金額の100円玉が追加で必要。必要な時にすぐに取り出せるように、小銭入れ等に入れた上でリュックサックのポケットに収納。 | |
21:千円札 | ★★★ | 25枚(25,000円分)程度。内訳は山小屋の宿泊代10,000円前後、山小屋での買物や食料品の購入や非常時(もう一泊せざるを得なかったり、病院に直行する場合)の備えに15,000円程度。 | |
22:レインウェア※4 | ★★★ | 耐水圧20,000mm以上、透湿度20,000g/㎡・24hr以上の防水透湿性能を有する3層構造の生地で登山用に作られたセパレートタイプの物を上下とも。ポンチョやコートはNG。内側に防寒着を重ね着することも考慮して、ゆったり目のサイズの物を。フードの後頭部からドローコードが出ていて、パンツの裾が膝まで開き、ジャケットのポケットの位置が高い物を。視認性の良い色の物がお勧め。 | |
23:防寒着 | ★★★ | 前開き仕様のダウンかフリース。比較的重いがウールでも悪くない。被り仕様はNG。防水袋に入れて。 | |
24:サングラスケース(眼鏡ケース) | ★★★ | サングラス(眼鏡)を買った時に付属していたサングラスケース(眼鏡ケース)で良い。 | |
25:ヘッドライト(と予備電池) | ★★★ | 明るさ100ルーメン以上で防水仕様の物を。明るさ(照射距離)を変えられるとなお良い。電池を予め装着した上で、予備電池一式も持つ。 | |
26:ビニール袋(ゴミ袋) | ★★★ | 大1枚、中2~3枚、小1枚程度。穴が開いていないこと。 | |
富士登山に必須の持ち物・装備その3 = 様々な事態に備える持ち物 | |||
27:リュックサックのレインカバー※4 | ★★ | 専用品がリュックサックに付属しているならそれを、付属品が無ければリュックサックの容量に見合った物を。 | |
28:レイングローブ※4 | ★★ | 防水透湿性と滑り止めの機能を持つ物を。 | |
29:スパッツ(ゲイター)※4 | ★★ | 防水透湿素材で作られた物を。ショートタイプで良い。 | |
30:着替え | ★★ | 1:肌着(上)、2:肌着(下)、3:行動着(上)、5:行動着(下)、6:登山用靴下を各一着(一足)のセット。防水袋に入れて。 | |
31:予備靴紐※5 | ★★ | 履く登山靴に使われているのと同程度の長さの靴紐を二本(一足分)。 | |
32:ヘッドライトの予備電池※5 | ★★ | ヘッドライトの仕様に合った本数を防水袋に入れて。 | |
33:布製ガムテープ※5 | ★★ | 1~2m程度を小分けして芯なしで巻き直すか、非常水用ボトルに巻き付ける。色は赤がお勧め。 | |
34:救急絆創膏※5 | ★★ | 5枚ほどを防水袋に入れて。 | |
35:医薬品※5 | ★★ | 日常生活で服用している薬を日数分、他に胃腸薬、痛み止め、筋肉痛等の薬適量を小分けし、防水袋に入れて。 | |
36:サバイバルシート※5 | ★★ | ポテチ袋の様にアルミが蒸着された2.1m×1.3m程度の保温性・防風性・防水性に優れたシート。一人一枚携行。 | |
37:ツェルト※5 | ★★ | ツェルトとは軽量コンパクトに収納できる簡易テント。同行者全員を収容可能なサイズ及び数量を。 | |
38:折り畳み傘 | ★★ | 軽量の物がお勧め。 | |
39:非常水 | ★★ | 500ml程度の単なる水を水筒やペットボトル等に入れて。 | |
40:非常食 | ★★ | 行動食と同様の物をもう一食分。行動食と分けても一緒にしても構わない。 | |
41:携帯トイレ※5 | ★★ | 市販の携帯トイレを1~2セット。 | |
42:トイレットペーパー or ポケットティッシュ※5 | ★★ | トイレットペーパーなら数メートルを芯無しで巻き直し、ポケットティッシュなら1~2包みを。防水袋に入れて。 | |
43:携帯電話 | ★★ | 出発前に満充電にし、登山中は電源OFFに。 | |
44:健康保険証※5 | ★★ | コピー不可。下山後病院に直行する場合に備えて山中に持ち込む。 | |
あれば有用かもしれない物 = ある意味で余計な物 | |||
45:トレッキングポール(ストック) | ○ | 長さ調節できる登山用の物を。持って行くなら十分有効に扱えるように事前に練習すベシ。 | |
46:カメラ | ○ | 携帯電話のカメラ機能を活用するなら出発前に満充電にし機内モードにして予備バッテリーも必携。防水対策も。 | |
47:予備バッテリー | ○ | 街中より山中の方が電池の消耗スピードが早いことを想定した上で十分に大容量の物を。防水対策も。 | |
48:携帯酸素 | △ | 高山病の症状が現れた場合に、一時しのぎとして活用。高山病になってしまったら、選択肢は下山をするのみ。ゆっくり上り酸素が薄い環境に体を順応させることと、小まめに十分に水分を取ることで高山病を予防する。 | |
49:日焼け止め | × | 無用。衣服や帽子や手拭い等で体を覆い、素肌の露出を無くして対応する。 | |
50:ウェットティッシュ | × | 無用。手袋を着用して手を汚さないことや、汚れた手でも食べられる形状の行動食を選ぶことで対応する。 | |
51:アイマスク | × | 無用。手拭いまたはタオルで代用。 | |
52:耳栓 | × | 無用。トイレットペーパーまたはポケットティッシュを丸めて代用。使い終わっても捨てず、別の機会に再利用。 | |
53:マスク | × | 無用。手拭いまたはタオルで代用。 | |
54:使い捨てカイロ | × | 無用。持っている全ての衣類を重ね着し、更にはサバイバルシートを羽織り、それでも寒ければ体を動かして対応。 |
※1 アイテム名をクリック(タップ)するとその説明に移動します。
※2 必要性の欄に示された印の意味は以下の通りです。
★★★:必ず使う物。
★★:使わずに済むこともあるが必ず携行すべき物。
○:無くても構わないがあなたと登山との関わり方に依っては必要な物。
△:心配ならば持って行っても構わない物。
×:むやみに持って行かずに済ませるべき物。
※3 雨が降っていないことが前提です。
※4 雨が降っている場合は、「16:リュックサック」に「27:リュックサックのレインカバー」を被せ、「15:手袋」の代わりに「28:レイングローブ」をはめ、更に「29:スパッツ(ゲイター)」と「22:レインウェア」を身に着けます。
※5 これら10品目を一つの防水袋にまとめて入れて、リュックサックの奥にパッキングします。
詳細は こちらの記事 をご覧下さい。
富士登山する際の荷物の重さ
中身の荷物とリュックサックも合わせた総重量は5kg程度になると思われます。
持ち運ぶ水や食料は現地の山小屋で調達(購入)すれば、その分の荷物を軽くすることができます。
富士登山する際に加入すべき保険
普段よりも厳しい自然環境下で体に大きな負担がかかる富士登山をすると、思いがけずケガをしたり病気を発症したりすることもあり得ます。
たとえそうなっても、無事に自力で下山できれば、結果論として、保険は必要なかったと言えるかもしれません。
ですが、捜索活動や救助活動が行なわれると、費用はとても高額になります。
その支払いを賄うために山岳保険にも加入すべきです。
富士登山する際の登山届(登山計画書)の作成および提出方法
登山届(登山計画書)を作成すること、および提出することは。次の二つの点で重要です。
- 実施しようとしている登山をあなたが詳細に把握できるようにする
- 万が一の場合に捜索活動や救助活動を適切に行なえるようにする
登山届(登山計画書)に関しては、実は、書式が統一されていたり提出先が一元化されていたりする訳ではありません。
例えば、静岡県警察からは この様な書式(PDF形式) が公開されています。
いずれにしても、記載事項としては以下の項目を明記して下さい。
- 日程(入山予定日時および下山予定日時)
- 行程(入山予定登山口、歩行ルート、経由地点、宿泊予定山小屋名、下山予定登山口など)
- 安全対策(計画通りに実施できなかった場合の対策)
- パーティー代表者の氏名、性別、年齢、住所、電話番号など
- パーティー同行者全員の氏名、性別、年齢など
- 緊急時の連絡先になってくれる人の氏名、電話番号
- 食料や水の量も含めた持ち物すべてを列挙
提出先は、登山口がある市町村の警察署でも受け付けてくれますし、登山口に設置されている登山ポストに入れても構いません。
ですが、富士登山に行くなら、以下のサイトで作成および提出すると簡単に済ませることができます。
富士登山にかかる費用
富士登山という用途に耐え得る十分な機能・性能を有する装備を全て新調する想定で、かかる費用を見積ってみました。
服装・装備・持ち物等 | 100,000円程度 |
保険料 | 数百円〜 |
ご自宅と登山口との間の交通費 | 移動手段により様々 |
入山料 | 1,000円 |
行動中に摂る飲食物 | 2,000円 |
宿泊代 | 10,000円前後 |
トイレチップ | 1,000円程度 |
記念品・お土産品 | 人それぞれ |
富士山という上級の山に登っても十分に用を成す装備を購入するとなると大きな出費だと思います。
ですが、機能・性能が不十分な廉価品で妥協することはおやめ下さい。
せめて登山靴だけでも、あなたの足の形・大きさにピッタリと合い快適な履き心地が得られる物をお選び下さい。
靴下やレインウェアは日常生活の中で使っても大いに役立つはずですので、持っていても損は無いと思います。
富士登山から帰った後、使う見込も無く、保管することも避けたい物は、フリマサイト等で売って換金して出費を抑えてはいかがでしょうか。
また、購入するのではなく、レンタルを活用するという方法もあります。
富士登山のための体力トレーニング
富士登山をするということは、「数kgの荷物を背負い、一泊二日の時間をかけて、30階建て(高さ約100m)のタワーマンションを一階から屋上まで階段で約20往復を歩き通すのに相当する運動をする」ことを意味します。
それに見合う体力(脚力や持久力)が必要です。
ウォーキングや階段の上り下りやスクワットなどがおすすめです。
日常の活動がトレーニングも兼ねるように工夫したり、毎日の生活の中で、運動する時間を意識的に確保し積極的に運動するようにして、富士登山を成し遂げられるだけの十分な体力を養って下さい。
いきなり大きな負荷をかけては逆効果ですが、それなりの重量の荷物を敢えて背負った状態で歩いたり階段を上り下りすると効果がより高まると思います。
富士登山に関するよくある質問とその答
富士登山の歩行距離や歩行時間の目安はどれくらいですか?
歩くルートにもよりますが、往復で、歩行距離は10km〜20km、歩行時間は7時間〜11時間くらいです。
お鉢巡りをすれば、更に3km、90分くらい追加されます。
これらの時間には休憩時間は含まれていません。
山小屋での宿泊の時間を除き、休憩時間や、トイレや買い物や写真撮影等の時間も考慮すると、3割〜5割増しの時間を要すると見込んでおいて下さい。
富士登山のルート上にトイレは何箇所くらいありますか?
どのルートにも、登山口とルート頂上付近の最低2箇所は公衆トイレがあります。
他に、途中にある山小屋もトイレを利用できる施設だということを覚えておいて下さい。
吉田ルートには、更に公衆トイレが合計2箇所あります。
トイレを利用する際は100円〜300円(利用するトイレにより異なる)のトイレチップが必要です。
トイレチップとして、100円玉で千円程度用意しておいて下さい。
富士登山で持ち運ぶべき行動食や行動水の量はどれくらいですか?
非常時に備えて、最低でも、一食分程度(パンやおにぎり2〜3個相当、お菓子でも可)の食料と500ml程度の水を、常時持ち運んで下さい。
この他に、一泊二日の行程を歩き通すのに要する、合計4〜5食程度の食料と3〜5l程度の水を、最初から持ち込んだり途中の山小屋で購入したりして対処します。
持ち運ぶ行動食や行動水の量を減らして、荷物を軽量化し、体力の消耗を抑えることを優先させるか、途中にある山小屋で購入することは考えず、全行程を通して必要と思われる量を最初から持ち運んで、出費を抑えることを優先させるかはあなた次第です。
初心者は、山小屋でその都度購入して、荷物をなるべく軽くして行動することをおすすめします。
準備万端で楽しい富士登山を
富士山は決して初級者レベルの山ではありませんし、たとえ開山期間中でも悪天候の中で登山するのは大変危険です。
ですが、事前に的確に情報収集し、周到な計画の下で、適切な服装や持ち物・装備を持ち、十分に体力を養い、天気の良い日を選んで臨めば、富士登山が人生初の登山だという人でも登ることは十分可能です。
下界では見られない光景を見たり日常ではできない体験をしたりと、大いに楽しんで下さい。
そして、登頂するだけでなく、無事下山し、帰宅なさって下さい。