登山に行くには地図と共にコンパス(方位磁針)も必要だと聞いたけど、具体的にどれを持って行けば良いか分からずお困りの人もいると思います。
実際、同じコンパス(方位磁針)と名が付く物にも幾つかの種類があり、適した物じゃないと実際の登山現場でほとんど役に立ちません。
そこで今回は、登山で使うのに適したコンパス(方位磁針)に求められる仕様や満たすべき条件等を解説し、おすすめを紹介いたします。
目次
サイト運営者のイチオシ
YCM:オリエンテーリングコンパス(畜光) TYPE 3
機能、性能、価格のバランスが良く、初心者でも上級者でも使い易い製品です。
蓄光塗料が使われており夜間でも見易いです。
登山におけるコンパス(方位磁針)の必要性
登山をするに当たってコンパス(方位磁針)とは道迷いを防ぐために活用する必携品です。
と、言いましたが、コンパス(方位磁針)と磁北線を引いた地図を組み合わせて使うことによって初めて有効に活用することができます。
つまり、コンパス(方位磁針)だけを持って登山に出かけても、あまり用を成さないということです。
なぜならば、コンパス(方位磁針)は、根本的には北の方角(磁北)がどちらの方向であるかを知らせてくれるだけの道具だからです。
ですが、磁北線を引いた地図と合わせて使うことで大いに威力を発揮してくれ、有用な情報が得られます。
具体的には、
- これから進むべき方向がどちらであるか
- 自分が現在いる位置が地図上のどこであるか
- 地図から読み取った間隔が実際にはどのくらいの距離であるか
を知ることができます。
なので道迷いを防ぐことができるのです。
次の章で順番に簡単にご説明いたします。
登山でコンパス(方位磁針)を使う場面
進むべき方向を知る
分岐点でどちらの方向に続いている道を選べば良いかを知りたい時にコンパス(方位磁針)を使います。
他にも、踏み跡が薄い道を歩いていて不安な時に、コンパス(方位磁針)を活用して進む方向を確認したりします。
現在地を知る
上でお話ししたことは、そもそも現在地が地図上のどこかがわかっている場合じゃないと使えません。
現在地がわからない時は、コンパス(方位磁針)を使って現在地が地図上のどこであるかを先ず明らかにする必要があります。
コンパス(方位磁針)はそれを可能にする道具でもあります。
距離を知る
地図から読み取った間隔が実際にはどのくらいの距離であるかを算出する際にもコンパス(方位磁針)を活用します。
距離を知ることに関してはコンパス(方位磁針)の、根本の機能ではなく、付加された機能を活用します。
具体的には、コンパスに付属しているスケール(物差し)を活用します。
コンパス(方位磁針)の中には、ベースプレートコンパスと言って、透明な台座の上にコンパス(方位磁針)が取り付けられているタイプの物があります。
そして、多くの物では、この台座にスケール(物差し)の目盛りが刻まれています。
このスケール(物差し)で長さを計ることによって距離を算出することができます。
登山用コンパス(方位磁針)の選び方
満たすべき9つの条件
コンパス(方位磁針)と聞くと、下の写真のような円形の物を思い浮かべる人もいらっしゃるかもしれません。
ですが、このようなコンパス(方位磁針)は登山で使おうとすると、ほとんど役に立ちません。
なぜならば、このようなコンパス(方位磁針)は、北の方角(磁北)がどちらの方向であるかを知ることができるだけだからです。
必要な情報は、進むべき方向がどちらであるかです。
進むべき方向を知るためには、北の方角(磁北)を基準として東(右)または西(左)へどれだけ向きを変えた方向であるかを、地図と組み合わせて使うことによって読み取ります。
そのためには、台座(ベースプレート)と呼ばれるパーツと組み合わさっていることが必須の条件です。
つまり、登山で使うのに適したコンパス(方位磁針)の具体的な選択肢は、ベースプレートコンパス、あるいはマップ用コンパス、あるいはオリエンテーリングコンパスと呼ばれるタイプのコンパス(方位磁針)一択です。
登山で使うのに適したコンパス(方位磁針)を選ぶ際は、以下の9つの条件を満たしていることを確認します。
先ず、以下の4つのパーツで構成されていることを確認します。
- 1:透明な台座(ベースプレート)
- 2:台座に取り付けられた回転させられ、透明なカプセルリング
- 3:カプセルリングの中に組み込まれた北を指す磁針
- 4:台座の端に開いた穴に通された首から吊るすのに適した長さのストラップ
また、以下の3つの仕様が満たされている必要もあります。
- 5:進むべき方向を示す矢印(進行線)が台座に記されている。
- 6:進むべき方向に自分の向きを合わせたら北がどちら側になるかを示す印(ノースマーク)がカプセルリングに記されている。
- 7:スケール(物差し)の目盛が台座に刻まれている。
そして、念のため、次の2つの条件を満たすことも確認しておきます。
- 8:カプセルリング内がオイルで満たされている。
- 9:日本(北半球中緯度地域)で使われることを想定して作られている。
ベースプレートコンパスであること
登山で使うのに適したコンパス(方位磁針)は、心臓部である「2:カプセルリング」部分だけでは不十分で、「1:台座(ベースプレート)」も必須のパーツです。
そして、これらは透明、つまり向こうが透けて見える必要があります。
なぜならば、登山においてコンパス(方位磁針)は、地図と組み合わせて使うことが前提だからです。
登山中にコンパス(方位磁針)を活用して最も得たい情報は、進むべき方向がどちらであるかです。
その情報は、地図とコンパス(方位磁針)とを組み合わせて使うことで得られます。
進むべき方向を地図から読み取るには、地図の上にコンパス(方位磁針)を重ね合わせ、台座(ベースプレート)に記された進行線を進むべき方向に、カプセルリングに記されているノースマークを北(厳密に言うと磁北)の方角に向ければそれで完了です。
そのためには、
- 台座が透明であること。
- 進行線が台座に記されていること。
- 磁針が組み込まれた透明なカプセルリングが台座に取り付けられていること。
- カプセルリングにノースマークが記されていること。
以上の4つが必須の条件です。
この4つの条件を満たすコンパス(方位磁針)とは、すなわちベースプレートコンパスなのです。
オイル式がおすすめ
カプセルリング内が、空気ではなく、オイルで満たされている物がおすすめです。
なぜならば、磁針が指す方向が安定するまでの時間が短いというメリットがあるからです。
デメリットは、あまりにも低温ではオイルが固まって磁針が動かなくなってしまいかねないことです。
ですが、大概の物で使用温度範囲の下限が−20度かそれよりも低いため日本でなら問題なく使えると考えて構いません。
スケール(物差し)付き
台座(ベースプレート)にスケール(物差し)の目盛が刻まれていることも必須の条件です。
登山で使うならば欠かせないオプションとも言えます。
なぜならば、地図から読み取った間隔が実際にはどのくらいの距離であるかを算出する時に必要だからです。
地図から距離を読み取るために、別で物差しをわざわざ持って行かなくても、スケール(物差し)付きのコンパス(方位磁針)を使えば事足ります。
更には、地図でよく用いられる二万五千分の一や五万分の一の縮尺にスケール(物差し)の目盛が合わせてある物だと、距離をわざわざ計算しなくて済むので重宝するかもしれません。
ストラップ付き
必要が生じた時にすぐに取り出して使えるように、台座(ベースプレート)に空いた穴に通したストラップで首から吊るして持ち運ぶのも一つの方法です。
地図上の曲線の長さを知るために、このストラップでトレースするという使い方もできます。
ストラップで首から吊るすと何かに引っかかった時に窒息する危険性を説く人もいます。
気になる人はシャツのポケットに入れるかリュックサックのショルダーストラップに吊るして下さい。
拡大レンズ付きが重宝するかも
台座(ベースプレート)に拡大レンズが付いている物も珍しくありません。
地図の細かい部分を拡大して見たい時に重宝するかもしれません。
付属していて構わない機能です。
付属していないものを無理して探さなくて構いません。
日本(北半球中緯度地域)用の製品であること
コンパス(方位磁針)を使う際に偏角のズレを考慮する必要があり、地図に磁北線を予め引いておかねばならないことはご存じかもしれません。
実は、もう一つ、伏角(ふっかく)によるズレも存在しています。
伏角とは上下方向のズレのことです。
ちなみに、偏角は左右方向のズレです。
日本で登山をするのに適したコンパス(方位磁針)を選ぶ時は、この伏角によるズレが予め補正されている物を選びます。
なぜ伏角が生じるかと言うと、コンパス(方位磁針)の磁針が指す向きは下の図の曲線(磁力線)の矢印の向きだからです。
その向きの具体的な傾向は下の表のようになります。
場所 | 磁針が指す向き |
北極付近 | 真下 |
北半球 | 斜め下 |
赤道付近 | 水平 |
南半球 | 斜め上 |
南極付近 | 真上 |
なので、そのままだと、磁針がカプセルリングの底や天井に当たってスムーズに動かなくなってしまいます。
それを補正するために、日本(北半球中緯度地域)で使うコンパス(方位磁針)は、磁針のS極側を微妙に重くして、バランスを取るように作られています。
なので、購入する際は、南半球用や赤道付近用に作られた物は選ばず、日本(北半球中緯度地域)用に作られている物をお選び下さい。
と書きましたが、普通に日本で買えば、その補正が既にされている物が売られているので大丈夫です。
登山用コンパス(方位磁針)おすすめ5選
YCM:オリエンテーリングコンパス(畜光) TYPE 3
日本の老舗メーカーが作った製品です。
機能・性能・価格のバランスが良く、初心者でも上級者でも使い易い製品です。
蓄光塗料が使われており夜間でも見易いです。
SILVA(シルバ):シルバコンパス No.3 Black ECH137
世界中に愛用者がいて、信頼性が高いメーカーの製品です。
必要十分な機能・性能を備えた一番人気の製品です。
ECO AID:コンパス
コスパで選ぶならばこちらがおすすめです。
使用者による評価はやや落ちますが、初心者が使うには十分です。
蓄光塗料が使われており夜間でも見易いです。
SILVA(シルバ):シルバコンパス No7 Classic ECH172
軽量コンパクトにこだわるならばこちらがおすすめです。
性能面、品質面に問題はありません。
SILVA(シルバ):エクスペディション 37448
上級者向けの高機能品です。
縮尺換算目盛りが刻まれたストラップや偏差設定用ネジが付き、また、傾斜を測ることもできます。
価格も高めです。
初心者にはオーバースペックかもしれません。
登山用コンパス(方位磁針)に関するよくある質問とその答
スマホのコンパス機能で代用してはダメですか?
残念ながらダメです。
なぜならば、スマホのコンパス機能には、あなたがどちらの方向へ進めば良いかを示す機能が備わっていないからです。
スマホのコンパス機能では、あなた(が持っているスマホ)がどの方角を向いているかが分かるだけです。
東北東56度の方角を向いていると精緻な数値で示されたところで、どちらに向かって進めば良いかまでは分かりません。
地図の上にコンパス(方位磁針)を重ね合わせ、透明な台座(ベースプレート)越しに、進行線を進むべき方向に合わせ、その時に磁針が指す向きにカプセルリングを回してノースマークを合わせておけば、進むべき方向が定まります。
ですが、スマホは透明ではありませんし、進行線が記された透明なベースプレートも、ノースマークが記された回転するカプセルリングもありません。
つまり、スマホのコンパス機能では登山現場で「進むべき方向がどちらであるか」という情報は得られないのです。
スマホは、登山中はむやみに使わず、万が一の時に救助要請の電話をかけるために電池を温存して下さい。
登山においてコンパス(方位磁針)と地図は必携品
登山をする際の持ち物リストに必ず挙がるコンパス(方位磁針)は、地図と組み合わせて使うことで初めて本領を発揮してくれます。
そのためには、その様な使い方を可能にする仕様や条件があります。
その条件に当てはまる、登山で使うのに適したコンパス(方位磁針)はベースプレートコンパス、あるいはマップ用コンパス、あるいはオリエンテーリングコンパスと呼ばれるタイプのコンパス(方位磁針)です。
あなたも、登山に行く時は登山現場で使うのに適したコンパス(方位磁針)を携行し、地図と組み合わせて、安心&安全な登山を楽しんで下さい。
そのためのイチオシの商品はこちらです。
富士登山を計画していてコンパス(方位磁針)以外の持ち物や服装についてお知りになりたい人は、こちらの記事 をご覧下さい。
富士登山に特定せず、登山全般における持ち物や服装についてお知りになりたい人は、こちらの記事 をご覧下さい。