登山道は街中のようには舗装されておらず、言わば悪路を歩くようなものです。
登山靴が重要だと語られていることに比べると、その内側で足に直接触れる靴下に関してはおろそかに扱われがちかもしれません。
足に豆ができたり靴擦れになったりして、足が痛くて歩くのに支障が生じても困るし、足が寒かったり逆に蒸れたりして、不快になるのも嫌ですよね。
厚さはどれくらいが良いか、重ね履きをするのが良いか、素材は何が良いか等々の疑問をお持ちの方もいると思います。
登山をこれから始めようと考えていて、そんな疑問や不安をお持ちの方を対象に、登山用の靴下についての役割や選び方も含めて、おすすめの商品を紹介いたします。
目次
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キャラバン:RLメリノ・アルパイン
1954年創業で、登山靴作りから始めた日本の会社による厚手の靴下。
右足専用と左足専用とで別々に設計されており、親指側を大きくするなどの立体成型でフィット具合が高められている。
一緒に履く登山靴のサイズによっては厚みの検討の余地あり。
登山用靴下の4つの役割
登山の服装の基本はレイヤリングであり、足にもこの考え方が応用できる部分もあります。
足では靴下がベースレイヤーで、考え様によっては靴下がミドルレイヤーも兼ね、登山靴がアウターレイヤーになると思います。
服であれば、暑ければ脱ぎ、寒かったり風雨が強かったりすれば着る服を追加し、状況に応じて調節します。
ですが、登山靴の内側に履く靴下の枚数を登山中に増やしたり減らしたりすることは現実的ではありません。
なぜならば、登山靴は行動中は必ず履きますし、紐の締め具合で調節できる範囲は限られているので、履く靴下の枚数を増やしたり減らしたりすると、靴が窮屈になったりダブダブになったりして不都合が生じるからです。
なので、入山してから下山するまで、同じ靴下のままで、履く枚数を増やしたり減らしたりすること無く過ごすことが一般的です。
更に、靴下にはレイヤリング以外にも重要な役割があります。
★登山用の靴下に求められる4つの役割
- 衝撃の吸収や緩和(当たりを和らげる)
- 靴と足とをフィットさせる
- 保温
- 吸汗、吸湿(濡れや蒸れを抑える)
従って、オールマイティー的な機能や役割が登山用の靴下には求められるのです。
衝撃の吸収や緩和
登山用の靴下には、衝撃吸収性(クッション性)が求められます。
なぜならば、登山とは、全行程に渡って、基本的に自分の脚を頼りに一歩一歩足を運ぶ活動でもあるからです。
一歩踏み出す毎に、足の裏には頻繁に大きな衝撃や負担が掛かります。
足の裏だけでなく、上りではかかとの後ろ側にも、下りではつま先や足の甲やすねにも、足を踏み出した時の衝撃や体重が掛かります。
登山靴は、ゴツゴツと尖った岩の上に乗っても、それに耐えたり身体を支えたりできるように、底が硬く頑丈に作られています。
靴底が硬いと、足を踏み出した時の地面からの衝撃を直接受けてしまいます。
この衝撃は、中敷きでも和らげられますが、更には靴下によっても和らげるのです。
靴下が、クッション材や衝撃緩衝材の役割をしてくれる訳です。
クッション材が必要な所は、足の裏だけではありません。
坂道を上ったり下ったりする登山では、上りではかかとの後ろ側にも、下りではつま先や足の甲やすねにも、足を踏み出した時の衝撃や体重が掛かります。
つまりは、つま先からすねやふくらはぎまで、何れの部分にも衝撃が加わる状況が生まれます。
その、何れの部分にも加わる衝撃を靴下で吸収する訳です。
なので、甲側が薄く作られている物は避けた方が良いです。
靴と足とをフィットさせる
足が靴の中でむやみに動かないように、靴と足との隙間を埋めてフィットさせることも靴下の重要な役割です。
なぜならば、登山とは重い荷物を背負って傾斜地を歩く活動でもあり、特に下りでは足を地面に勢いよく着きます。
その際に靴の中で足が動くと靴擦れになったり足の皮がむけたりして大変なことになります。
そうならないように靴と足との隙間をピッタリと埋める役割も靴下は担っています。
「靴と足との隙間をピッタリと埋める」ことは、靴下単体で検討しても、それができているかできていないか判明しません。
後でもお話ししますが、あなたの足にピッタリと合った靴と靴下をセットで選ぶことによって成立します。
保温
登山用の靴下には、保温性も求められます。
なぜならば、登山で行く先は標高が高い所なので寒いです。
例えば服装でも、寒い所へ行く時には、それに対処できるように保温性のある物を準備するはずです。
同様に、靴下にも保温性が求められます。
吸汗、吸湿
登山用の靴下には、吸汗性、吸湿性も求められます。
なぜならば、登山は、険しい坂道を上ったり下ったりする、負荷の大きな運動でもあるからです。
足がかいた汗は靴下で吸い取り、足の素肌の周辺はドライな状態に保つ方が快適です。
ここにもレイヤリングの考え方が応用できます。
肌に直接触れる靴下は、汗を吸い取る役割も担っているのです。
登山用靴下を選ぶ3つのポイント
靴下が、先にお話しした4つの役割を十分に果たしてくれるためには、どの様なポイントを押さえれば良いかについてお話しいたします。
★登山に適した靴下を選ぶ際に押さえるべき3つのポイント
- 厚み
- 素材
- 大きさ
厚み
厚手または中厚手がおすすめ
厚みは厚手または中厚手の物がおすすめです。
なぜならば、厚みがある方が衝撃吸収性(クッション性)に優れるからです。
他にも、厚みがある方が保温性にも優れます。
また、厚みがある方が、汗を多く吸ってくれるからです。
保温性が高いと、夏は暑くてかえって不快ではと思われるかもしれません。
ですが、標高が高い山では、夏でも保温が必要な場面はあります。
また、後ほどお話しするメリノウールは温度調整機能があるため、暑い時でも苦にはなりません。
なので、厚みは厚手または中厚手の物がおすすめです。
靴とセットで選ぶ
登山用の靴下は登山靴を履く時に内側に履く物ですから、先にもお話しした通り、選ぶ際には靴とセットで考えます。
なぜならば、靴下を単体で履いた状態でどれだけ快適でも、靴を履いた時に窮屈ならば血行不良になる等で、逆に緩ければ足が中で動いて踏ん張りが効かなくなる等で、いずれにしても不具合が生じます。
そうならないように、靴下と靴の最適な組合せを選ぶ必要があります。
つまり、靴下と靴を同時に組合せで選ぶということです。
そして、その靴を履く時はいつも、組合せで選んだ靴下を履きます。
重ね履きは次善の策
登山靴を履く時は靴下二枚を重ね履きするという考え方もありますが、それは昔の話です。
なぜならば、昔の革製の重登山靴は硬くて保温性も乏しい物でした。
そのため、靴との当たりを和らげたり保温性を補ったりすることを目的として、靴下二枚を重ね履きするという方法で対処していた訳です。
ですが、今の登山靴は改良されています。
内側にクッション材が備わっていたり、例えば冬用登山靴の中には二重構造になっている物もあります。
クッション性も保温性も良くなっているため、靴下一枚で間に合うレベルになっています。
なので、確かに硬い靴もありますが、重ね履きをせずに済む方向で先ずは考えた方が得策です。
仮に、靴下二枚を重ね履きした上に靴を履くとなると、、、
①先ず、素足にピッタリと合う大きさの靴下を選び、
②次に、その状態でピッタリと合う、内側に履いた靴下よりも少し大きい靴下を選び、
③更に、その状態でピッタリと合う靴を選ぶ
という3つの段階を踏まなければなりません。
3つ重なった条件を同時に満たすよりも、2つの条件だけで済ます方が簡単です。
十分なクッション性や保温性がある靴とセットで、足にピッタリとフィットする厚手または中厚手の厚みの靴下一枚を組み合わせることをおすすめします。
素材
登山用の靴下におすすめの素材は、ウールの中でも優れ物であるメリノウールです。
なぜならば、メリノウールは登山という用途で求められる多くの利点を備えているからです。
★メリノウールの利点
- 保温性に優れる
- 濡れても保温性を保つ
- 温度調整機能がある
- 吸汗性、吸湿性に優れる
- 肌触りが比較的良い
- 抗菌防臭性がある
- 丈夫い
- 縮みにくい
このように、多くの利点を備えているメリノーウルですが、値段が比較的高かったり、速乾性はトップレベルではないなど、残念なところもあります。
メリノウールの良い点は残し、他の化学繊維の持つ利点も付け加えた、良いとこ取りの混紡繊維で作られた登山用靴下ならより一層快適度合いも増します。
靴下に限らず登山用の衣類全般に言えることとして、絶対に避けるべき素材は木綿(綿、コットン)です。
なぜならば、木綿は乾きにくいため、汗を吸うと汗冷えになったり、肌がふやけて酷い時には皮がめくれたりしかねないからです。
大きさ
サイズ(足長=指先からかかとまで)は、足にピッタリと合ったサイズの物を選びます。
また、丈(かかとから履き口までの長さ)は、靴の履き口よりも靴下の履き口が上に来る長さの物を選びます。
上の図の様になればOK!
上の図の様ではNG!
なぜならば、靴下の役割の一つに、足と登山靴との当たりを和らげることがあります。
上りや下り等の多様な傾斜地を歩く登山には、足首全体を保護してくれるミドルカットやハイカットの靴が適しています。
そして、上りではかかとの後ろ側にも、下りではつま先や足の甲やすねにも、足を踏み出した時の衝撃や体重が掛かります。
なので、靴と当たるかもしれない部分全体よりも少し大きめに靴下で覆う必要があります。
登山用靴下おすすめ4選
先に選び方でお話しした3つのポイント全てを押さえたお勧めの品物は次の4つです。
厚みに関して、厚手の物にするか中厚手の物にするかは、きつくも無く緩くも無く、靴とフィットする方を選んで下さい。
キャラバン:RLメリノ・アルパイン(厚手)
1954年創業で、登山靴作りから始めた日本の会社による厚手の靴下。
右足専用と左足専用とで別々に設計されており、親指側を大きくするなどの立体成型でフィット具合が高められている。
素材はメリノウール79%、ポリエステル14%、ナイロン6%、ポリウレタン1%で構成されている。
キャラバン:RLメリノ・レトロトレッキング(中厚手)
1954年創業で、登山靴作りから始めた日本の会社による中厚手の靴下。
右足専用と左足専用とで別々に設計されており、親指側を大きくするなどの立体成型でフィット具合が高められている。
素材はメリノウール60%、アクリル17%、ポリエステル10%、ナイロン8%、ポリウレタン5%で構成されている。
スマートウール:PhDアウトドアヘビークルー(厚手)
1994年創業で、メリノウールを使用した靴下等を創業から一貫して作り続けるアメリカの会社による厚手の靴下。
大きな負荷が掛かるつま先とかかとが特に厚く作られている。
素材はメリノウール73%、ナイロン25%、ポリウレタン2%で構成されている。
スマートウール:PhDアウトドアミディアムクルー(中厚手)
1994年創業で、メリノウールを使用した靴下等を創業から一貫して作り続けるアメリカの会社による中厚手の靴下。
大きな負荷が掛かるつま先とかかとが特に厚く作られている。
素材はメリノウール63%、ナイロン35%、ポリウレタン2%で構成されている。
こちらは女性の足型に合わせて細めにデザインされた物です。
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登山靴との組合せで靴下も選ぼう
肌に直接触れる靴下は、いわゆる「登山の三種の神器」の一つにも挙げられている登山靴との間を取り持つ大切なアイテムです。
自分の脚を頼りに過酷な環境下を長時間歩く登山において登山靴が有効に機能するためには、あなたの足と登山靴との間を取り持つ靴下の機能、性能やフィット具合も重要です。
あなたの登山靴とあなたの足にピッタリと合った靴下を履いて、快適に存分に山を楽しんで下さい。