登山に行こうと考えているものの、
- 差し当たって本格登山に行く訳ではない。
- 登山に頻繁に行く訳ではない。
- この先ずっと登山を続けるかどうかわからない。
等の理由で、本格的な登山靴を買うことをためらう方もいると思います。
自分の実状を考えたら、エントリーモデルと言われる様な、機能や性能は程々で良いから安い登山靴が欲しいと考えるのもごもっともです。
ですが、安さを優先して登山という用途に必要な仕様や機能が省かれた靴を選んでしまっては使い物にならず、無意味で無駄な買い物になってしまいます。
そこで今回は、入門レベルで難易度の低い短時間の低山登山で履くことを想定し、その様な用途に適した登山靴の選び方とおすすめを紹介いたします。
目次
登山靴の選び方 ~選ぶ際の7つのポイント~
最初に、エントリーモデルの登山靴を選ぶ際のチェックポイント、つまりチェックすべき項目が何で、それがどうであれば良いかをまとめた表を示します。
項目 | 要件 |
---|---|
①履き口の高さ | ミドルカットが最適。ローカットは機能不足、ハイカットは機能過多。 |
②ソール(靴底)の硬さ | 柔らかめが適する。目安は手の力で曲がる硬さ。 |
③アッパーの素材 | 合皮または化繊が使われている物。オールレザーは避ける。 |
④ソール(靴底)の溝 | 深くて広いことを確認。 |
⑤防水透湿性 | 備わっていることが必要。 |
⑥軽量性 | 他の必要な条件が満たされていることが前提で、なるべく軽い方が望ましい。 |
⑦サイズ | つま先側に1~1.5㎝程度の余裕があり、足にフィットする物。 |
それぞれについて、順番に詳しく説明いたします。
①履き口の高さ
登山靴を履き口の高さで分類すると、ローカットとミドルカットとハイカットの3つがあります。
これらの違いは、ローカットよりもミドルカットに、ミドルカットよりもハイカットになるほど、足首よりもより高い所まで靴で覆われます。
出典:MAMMUT公式
エントリーモデルの登山靴ならば、ミドルカットがおすすめです。
なぜならば、ローカットには必要な機能が備わっておらず、使い物にならないからです。
どういうことかと言うと、登山では、坂道を下る行程が必ずあります。
ミドルカットやハイカットならば、つま先が靴に当たらないようにして、下りで足が着地した時の体重をすねの前面下部でも受け止めることができます。
ですが、ローカットではその様な仕様になっていないため、つま先で体重を受け止めることになり、つま先を痛めかねません。
なので、登山においてはローカットは無用です。
他方、ハイカットではそれだけ重量が増し、逆効果だからです。
どういうことかと言うと、登山というハードな活動においては、体力の消耗を防ぐために、荷物や装備は軽い方が有利であり有効です。
経験や体力が備わっていない初心者ならばなおさらです。
ミドルカットであれば、ハイカットに比べて軽いです。
なので、エントリーモデルの登山靴にハイカットは不適です。
他にも、ミドルカットはハイカットに比べて価格が安いです。
従って、エントリーモデルの登山靴としてはミドルカットがおすすめなのです。
②ソール(靴底)の硬さ
登山靴のソール(靴底)の硬さに関しては、硬い方が都合が良いことも悪いこともありますし、逆に、柔らかい方が都合が良いことも悪いこともあります。
そして、登山靴、つまり登山という用途で履くことを想定して作られた靴のソール(靴底)は、普通の運動靴やスニーカー等よりも硬い仕様になっています。
ソール(靴底)を硬くする狙いは、例えば岩場を歩く場合のように、わずかなスペースにソール(靴底)の一部分しか接していない状態でも、足裏を保護したり体を安定して支えたりできるようにするためです。
そんな登山靴の中でも、ソール(靴底)の硬さは物によって異なります。
では、エントリーモデルの登山靴で済ませられる登山に行く場合に適したソール(靴底)の硬さはどの程度かと言うと、登山靴の中では柔らかい物がおすすめです。
目安としては、手の力で曲がる硬さの物です。
なぜならば、ソール(靴底)が硬いことが有利な所を歩く場面がほとんど無いからです。
また、ソール(靴底)が柔らかいことによる利点があるからです。
例えば、ソール(靴底)が硬いと普段履いている靴とは歩く感覚が異なりますが、ソール(靴底)が柔らかければ普段履いている靴に近い感覚で歩くことができるため歩きやすいです。
ソール(靴底)が硬い登山靴を履いて歩く際には、それに適した普段とは異なる歩き方を習得する必要があります。
また、ソール(靴底)が硬いと重くなり、逆に、ソール(靴底)が柔らかいと軽くなる傾向にあるため体力の消耗を防ぐことができます。
なので、エントリーモデルの登山靴を選ぶならば、ソール(靴底)が柔らかい物がおすすめです。
ただし、将来的に本格登山にまで範囲を広げる可能性があるならば、ソール(靴底)がある程度硬い登山靴を選ぶことをおすすめします。
そして、ソール(靴底)が硬い登山靴を履いた場合の歩き方を習得することが望ましいです。
③アッパーの素材
登山靴のアッパーによく使われている素材は、本革(レザー)や合皮や化繊です。
エントリーモデルの登山靴のアッパーの素材としては、オールレザーではなく、合皮や化繊が使われている物がおすすめです。
なぜならば、本革に比べると合皮や化繊の方が軽いからです。
そして、登山というハードな活動においては、体力の消耗を防ぐために、荷物や装備は軽い方が有利であり有効だからです。
他にも、本革に比べると、合皮や化繊の方が安いこともエントリーモデルとしてふさわしい理由の一つです。
合皮や化繊は、本革と比べて、軽くて安い反面、強度や耐久性の面で劣るという欠点もあります。
ですが、それは本革と比べての話であり、エントリーモデルの登山靴として十分な強度や耐久性はあります。
それに、エントリーモデルの登山靴を使う場合は、それ程ハードな登山には行かないはずです。
従って、エントリーモデルの登山靴では、アッパーの素材が合皮や化繊やこれらが組み込まれた物を選ぶのがおすすめです。
④ソール(靴底)の溝
登山をする際に履く靴においては、ソール(靴底)の溝が深くて広いことは必須です。
なぜならば、ソール(靴底)の溝が深くて広いことによって、目詰まりが起こりにくく、グリップ性能が維持できるからです。
左から順に Zcoli:トレッキングシューズ ミドルカット、
キャラバン:C1_02S ゴアテックス、
メレル:モアブ 2 ミッド ゴアテックス ワイド ワイズ、
マムート:デュカン ミッド ゴアテックス。
出典:楽天市場
なので、登山靴を選ぶ際はソール(靴底)の溝が深くて広いことを確認します。
⑤防水透湿性
エントリーモデルであるか上級者用モデルであるかに関係無く、登山をする際に履く靴においては防水透湿性は必須の機能です。
なぜならば、山の天気は変わりやすいと言われる通りで、足元の雨対策も必要だからです。
登山に行く際はレインウェアを必ず持って行くのと同じです。
降雨時だけでなく、朝露で濡れた薮や、雨が降った後のぬかるみを通る時や、橋が無くても渡れるくらいのちょっとした小川を横切る時でも、防水透湿性が役に立ち、快適に歩くことができます。
ゲームならば、初心者向けのレベルを選べば攻略が難しい場面に取り組まずに済ませることも可能かもしれません。
しかし、登山のような大自然の中での活動では、相手が初心者だからと言って山や自然は手加減してくれません。
なので、登山靴を選ぶ際は防水透湿性が備わっていることを確認します。
防水透湿性素材の代表例はゴアテックスです。
ゴアテックスの表示があれば確実ですが、防水透湿性素材は他にもあります。
いずれにしても、カタログや商品説明で「防水透湿性」と明記されている物を選びます。
防水透湿性という機能が備わっていることによるデメリットを敢えて挙げるならば、それは、価格が高くなってしまうことです。
ですが、これは安全に快適に登山をする上で外せない要素だと理解して下さい。
そこまでの出費が難しいならば、雨が降りそうな場合も含めて雨の日や雨上がりには決して登山に出掛けないか、足が濡れても不快に耐えるかして対応して下さい。
⑥軽量性
軽量性は第二優先の選択基準という位置付けです。
つまり、他の必要な条件が満たされていることが前提で選択肢が複数ある場合に当てはめる選択基準です。
確かに、登山において、装備(身に着ける物)や持ち物の軽量性は重視すべき項目の一つでもあります。
なぜならば、身軽な方が
- 体力の消耗を防げる。
- 疲れにくい。
- いざという時に迅速に行動できる。
この様に、軽量性は安全に登山ができるようにするために有利で有効な要素だからです。
このことは、登山靴に限らず登山用品全般に言えます。
また、初心者に限らず上級者でも誰にでも当てはまります。
なので、そもそも登山用品メーカーが、軽量性を大いに意識した商品を既に提供してくれています。
ですから、軽量性という面で仮に劣る商品があったとしても、そうなることを狙って作られた訳ではありません。
必要な機能や性能が備わった仕様の商品を作ったら結果的に重くなってしまった訳です。
つまり、重量は他の仕様や要素に左右されてしまう要素だということです。
例えば、下りで足が着地した時の体重を、つま先ではなく、すねの前面下部で受け止める機能はミドルカットやハイカットの登山靴には備わっていますが、ローカットの靴には備わっていません。
そして、ローカットの靴の方が、ミドルカットやハイカットの靴よりも、軽量性という面では優れています。
だからと言って、軽量性を優先してローカットの靴で済ませることはできません。
なので、軽量性は第二優先の選択基準という位置付けなのです。
しかし、これまでお話しした基準に従って選べば、軽量性も両立する場合がほとんどです。
例えばアッパーの素材が、本革ではなく、合皮や化繊の物を選ぶことは軽量化にもつながります。
エントリーモデルの登山靴は軽量性という条件を十分に満たしていますのでご安心下さい。
⑦サイズ
日常よりもはるかに大きな負担が足にも靴にも長時間かかる登山においては、サイズ選びは特に重要です。
なぜならば、靴の大きさや形状が足とは微妙に合わず、ほんの一部分が圧迫されたりフィットしなかったりするだけでも、豆や靴擦れになり、不快な思いをしたりトラブルに発展したりしかねないからです。
この様な靴は、どれほど高機能高性能で、どれほど気に入ったデザインで、どれほどコスパに優れていたとしても論外です。
あなたの足にピッタリとフィットすることが大前提で最重要な条件です。
登山靴のサイズを選ぶ際は、その靴を履く時に一緒に履く、厚手か中厚手の靴下を履いた状態で行います。
その状態で、あなたの足にピッタリとフィットし、かつ、つま先側に1~1.5cm程度の余裕ができるサイズの物を選びます。
登山靴のサイズを選ぶ7ステップ
- 登山靴を履く時に実際に使う厚手又は中厚手の靴下を履きます。
- 候補の登山靴のインソール(中敷き)を取り出します。
- インソール(中敷き)の上にかかと側を合わせて立ち、つま先側に1~1.5cm程度の余りがあるかを確認します。
※ 体重がしっかりかかった状態で判定します。
※ 余りが1~1.5cm程度でなければ、1~1.5cm程度の物を選び直します。 - インソール(中敷き)を戻し、足の指が伸びた状態で靴内部の先端に当たるように靴に足を入れます。
- かかと側に手の指が一本程度入る隙間があることを確認します。
- かかと側が靴に添うように足をズラして履き直し、靴紐をキッチリと締めて履き心地を確認します。
- 実際に歩いて履き心地を確認します。
登山靴のサイズの選び方の詳細に関しては、 こちらの記事 をお読み下さい。
また、靴下のおすすめに関しては、 こちらの記事 をお読み下さい。
登山靴の手入れ方法と保管方法
いくらエントリーモデルの登山靴とは言え、決して安い買い物ではないでしょうから、きちんと手入れや保管をして、最高の状態で使いたいものです。
登山靴も一種の道具ですから、手入れや保管を正しく行うことで機能や性能も維持できますし寿命も延びます。
手入れ方法
先ず、使用前にゴアテックス対応「撥水スプレー」(「防水スプレー」と言われることもありますが、厳密には「撥水スプレー」を使って下さい)を一度吹き付けておくことが、上手な手入れ方法の第一歩です。
使用後の手入れは、靴紐を外し、インソール(中敷き)を取り出して行います。
ソールに付いた泥は水洗いしても良いですが、アッパーは水洗いせず、ブラシで汚れを落とします。
汚れがひどい場合は、水で濡らして絞った布やスポンジを使い拭き取ります。
アッパーとソールの境目に詰まっている泥もキッチリ落としておくことが重要です。
風通しの良い日陰で充分に乾かします。
乾いたら、仕上げに撥水スプレーを吹き付けます。
撥水スプレーのおすすめは、 こちらの記事 をご覧下さい。
保管方法
型崩れしないよう、靴の中に新聞紙などを詰め、靴紐を一番上まで締めておきます。
箱や袋には入れず、直射日光が当たらず高温にならず風通しが良く湿気が低い所で保管します。
車のトランクや屋外倉庫などでの保管は避けて下さい。
登山靴の手入れ方法及び保管方法の詳細に関しては、 こちらの記事 をお読み下さい。
こちらの動画も参考にして下さい。
↓ ↓ ↓
エントリーモデル登山靴おすすめ4選
エントリーモデル登山靴のおすすめ品比較表
メーカー: 商品名 | Zcoli: トレッキングシューズ ミドルカット | キャラバン: C1_02S ゴアテックス | メレル: モアブ 2 ミッド ゴアテックス ワイド ワイズ | マムート: デュカン ミッド ゴアテックス |
---|---|---|---|---|
履き口の高さ | ミドルカット | ミドルカット | ミドルカット | ミドルカット |
アッパー素材 | 合皮+化繊 | 合皮+化繊 | 合皮+化繊 | 化繊 |
防水透湿素材 | 記載なし | ゴアテックス | ゴアテックス | ゴアテックス |
片足重量(サイズ) | 記載なし | 590g(26cm) | 510g(27cm) | 510g(27cm) |
おすすめの点 | 比較的安価 | ほどけにくい平紐を採用 Amazonのベストセラー 中級登山にも使える | 街使いも可能 | 中級登山にも使える |
残念な点 | 完全防水ではない等機能や性能が低め | 比較的重い | 悪路での靴底のグリップ力に不安あり | 比較的高価 |
Zcoli:トレッキングシューズ ミドルカット
靴底が柔らかくしっかり曲がる、ハイキングや低山登山に適したトレッキングシューズです。
比較的安い価格設定が魅力です。
靴底から上4cmが防水設計で完全防水ではない等、機能や性能は程々です。
キャラバン:C1_02S ゴアテックス
登山の入門者にも経験者にも使いやすいように設計されたキャラバン社の代表的なモデルです。
Amazonのハイキング・トレッキングシューズ部門のベストセラー商品です。
低山はもちろん、中級登山にも使うことができます。
靴紐には、ほどけにくい平紐が採用されています。
今回紹介する中では比較的重いのが難点です。
メレル:モアブ 2 ミッド ゴアテックス ワイド ワイズ
ハイキングやトレッキングで履くのに適した人気商品です。
幅が広めで比較的軽く柔らかく歩きやすいです。
街使いも可能です。
濡れた岩場のような所では歩き方を誤ると滑るという声もあります。
男性用
女性用
マムート:デュカン ミッド ゴアテックス
日帰りのハイキングからレベルの高いトレッキングまで多目的に使えます。
ソールは比較的剛性が高いです。
低山はもちろん、中級登山にも使うことができます。
今回紹介する中では価格設定が高いのが難点です。
男性用
女性用
あなたにとって最適な一足を
エントリーモデルの登山靴と言えども、必ずしも入門レベルで難易度の低い短時間の低山登山に適するだけで、他で履くことが難しいとは限りません。
もう少し高いレベルの登山に将来挑戦することになっても使える物もあります。
街使いできる物もあります。
価格が安いことも重要な要素です。
あなたにとって最適な一足を選んで、安全に快適に山を楽しんで下さい。
もっと広く登山靴全般について詳しく知りたい方は こちらの記事 をお読み下さい。