夏は登山をするのに適した季節です。
険しい山道を歩く登山で履く靴には登山靴が適しています。
ところで、一口に登山と言っても、低山の日帰り登山からテントや寝袋や食料も全て背負って時には岩稜帯も歩く長期縦走まで、意味する範囲は広いです。
従って、それらの異なる用途に合わせて、当然、登山靴にも多くの種類があります。
複数の靴を用途に応じて使い分けるに越したことはありませんが、一つの靴が一つの用途にしか活用できない訳でもありません。
決して安くない登山靴をせっかく購入するなら、次の登山の機会にも十分に活用できる物を選択するのが得策です。
今回は、あなたの登山志向や用途に合わせて、どんな登山靴があなたに適しているかお話しし、おすすめを紹介いたします。
あなたの登山用途に合った登山靴を導き出す3つのステップ
- ステップ1=あなたが行こうとしている登山レベルを把握する
- ステップ2=登山レベルに対応する登山靴の仕様や特徴の傾向を把握する
- ステップ3=あなたの登山用途に合った登山靴の仕様を特定する
あなたが「どの山」を「どの様に歩くか」が分かれば、登山レベルが定まるため、あなたの登山用途には「どの様な登山靴が適しているか」が分かります。
なぜならば、登山レベルによって適する登山靴が決まるからです。
ちなみに、登山レベルに影響を与える要素は幾つかあります。
また、登山レベルに適合させるための登山靴の仕様や特徴も幾つかあります。
ですから、先ず、あなたが「どの山」を「どの様に歩くか」と、登山レベルに影響を与える要素とを照らし合わせて、登山レベルを割り出します。
次に、登山レベルに対応する登山靴の仕様や特徴の傾向を把握します。
そこから、登山レベルに見合った登山靴の仕様を確定させます。
この様にすることで、あなたの登山用途に合った登山靴を導き出すことができます。
ステップ1=あなたが行こうとしている登山レベルを把握する
登山レベルに影響を与える要素には
- 歩行時間(注1)
- 路面状況(注2)
- 行先の標高(注3)
- 荷物の重さ(注4)
の4つがあります。
◎ 要素別、登山レベルの傾向
登山レベルが低い とは | 登山レベルが高い とは | |
---|---|---|
歩行時間(注1) | 短い | 長い |
路面状況(注2) | 岩や石等が少ない 傾斜が緩やか | 岩や石等が多い 傾斜が急 |
行先の標高(注3) | 低い | 高い |
荷物の重さ(注4) | 軽い | 重い |
注1:歩行時間・・・・登山中に弁当(昼ご飯)を食べるまでも無く完了する程度の短さか、それよりも長いかによって登山レベルは大きく変わります。
登山中に弁当(昼ご飯)を食べる必要がある長さであれば、日帰りと山小屋泊との違いはさほどありません。
注2:路面状況・・・・岩稜帯やガレ場やザレ場や石や砂利の上等を歩くかどうかで登山レベルは大きく変わります。
注3:行先の標高・・・・森林限界以下か森林限界を超えるかによって登山レベルは大きく変わります。
ちなみに、森林限界を超えると岩稜帯や石の上を歩く機会も増えます。
注4:荷物の重さ・・・・テント泊装備(テントや寝袋や食料など一式)を携行するかしないかによって登山レベルは大きく変わります。
日帰りと山小屋泊との違いはさほどありません。
ステップ2=登山レベルに対応する登山靴の仕様や特徴の傾向を把握する
登山レベルによって適する登山靴の仕様や特徴には次の様な傾向が見られます。
◎ 登山レベルに対する、適する登山靴の仕様や特徴の傾向
登山レベルが低い 場合は | 登山レベルが高い 場合は | |
---|---|---|
仕様①:履き口の高さ(注5) | 低い | 高い |
仕様②:ソールや アッパーの硬さ(注6) | 軟らかい | 硬い |
特徴①:足首の動かしやすさ(注7) | 動かしやすい | 動かしにくい |
特徴②:靴の重量(注8) | 軽い | 重い |
価格(注8) | 安い | 高い |
注5:履き口の高さによって、ローカット、ミドルカット、ハイカットに分かれます。
登山レベルが上がる程、足首のくるぶしより上までがしっかりと覆われる、より高い履き口の物が適します。
出典:MAMMUT公式
注6:登山レベルが上がる程、尖った岩や石の上を歩く機会も増えますし、荷物もより重くなりますので、足をしっかりと保護してくれ安定して支えてくれるように、ソールやアッパーがより硬い物が適します。
注7:登山レベルが上がる程、靴の履き口の高さも高くなりますし、ソールやアッパーも硬く頑丈に作られますので、足首を動かしにくくなる傾向にあります。
履き口が高くなる程、足首が捻れから保護されるという利点があります。
一方で、足首の曲げ伸ばしの動きは妨げないように、後ろ側だけ少し低くなっていたり、後ろ側の上部が軟らかくなっています。
注8:登山レベルが上がる程、履き口の高さも高くなりますし、ソールやアッパーも硬く頑丈に作られますので、靴の重量も重くなり、価格も高くなる傾向にあります。
ステップ3=あなたの登山用途に合った登山靴の仕様を特定する
◎ 登山内容に対応する登山レベルとそれに適した登山靴の仕様(早見表)
登山内容 | 登山レベル | 登山靴の仕様 |
---|---|---|
森林限界以下 日帰り | レベル低 | ミドルカット ソールがある程度曲がる |
森林限界超 日帰り又は山小屋泊 | レベル中 | ミドルカット又はハイカット ソールが少し曲がる |
テント泊装備を携行 | レベル高 | ハイカット ソールがほとんど曲がらない |
例えば東京の高尾山に登るならば、登山レベルは低です。
この様な登山には、ミドルカットでソールがある程度曲がる硬さの登山靴が適しています。
例えば富士登山や高山植物のお花畑を日帰りや山小屋泊で見に行く場合は登山レベルは中です。
この様な登山には、ミドルカット又はハイカットでソールが少し曲がる硬さの登山靴が適しています。
例えばテント泊装備を携行してアルプスの縦走をする場合は登山レベルは高です。
この様な登山には、ハイミドルカットでソールがほとんど曲がらない硬さの登山靴が適しています。
あなたの登山用途に合った登山靴を選ぶ5つのポイント
①アッパーの防水透湿性は必須
前提として、アッパーの防水透湿性は必須です。
なぜならば、雨に降られたりぬかるんだ道を歩く可能性もあります。
この様な状況に対応するには、外側からの水の侵入を防ぐ防水性と、内側でかいた汗を逃がす透湿性の両方が必要になるからです。
なので、登山で履く靴には、選択の余地なく、防水透湿性は必須です。
②履き口の高さ
森林限界以下の山に日帰りでしか行かない人ならミドルカットが適しています。
森林限界よりも上まで行くならばミドルカットでも良いですし、岩場やガレ場などの足下が不安定な所を多く歩くならばハイカットの方がより適しています。
テント泊装備を携行する場合はハイカットが適しています。
③ソールやアッパーの硬さ
普通の運動靴は登山という用途には適さない程に軟弱です。
歩行時間が長くなる程、あるいは足下の不安定度合いが増す程、あるいは荷物が重くなる程、ソールやアッパーがより硬く頑丈な靴が適します。
④余裕のあるサイズ
登山靴のサイズを選ぶ際は、余裕を持たせたサイズの物を選ぶのが良いです。
目安としては、厚手または中厚手の靴下を履いた上でプラス1cm程度大き目の物を選ぶと良いです。
あるいは、靴の中でつま先が靴の先端の内側に丁度当たるまで足を前にずらした時に、かかと側に手の指が一本入るくらいの隙間ができるサイズの物がおすすめです。
なぜならば、特に下りでは着地時に靴の中で足が前にズレがちになります。
この時に、靴のサイズに余裕が無いと、指先が靴に当たり、指先に過剰な負担が掛かってしまいます。
それを避けるために、余裕のあるサイズを選びます。
登山靴のサイズの正しい選び方に関して、詳しくは こちらの記事 を参考にして下さい。
ちなみに、靴下のおすすめは こちらの記事 をご覧下さい。
⑤フィッティング
今までのことは、外見やカタログを見るだけでもわかるかもしれません。
ですが、実際に履いてみて足にフィットしなければ、どれだけ優れ物の靴であっても価値はありません。
例えば、ほんの一箇所足に当たる部分があるだけでも、長時間・長距離を歩き続けるうちに、その部分の皮がむけてしまったら痛くて登山どころではなくなります。
ですから、自分の足の形にピッタリと合った靴を選ぶことはとても重要です。
夏の登山に適した登山靴おすすめ5選
メレル:カメレオン8ストームミッドゴアテックス
日帰り登山をメインに考えている人にはこちらがおすすめです。
捻じれ抑制や歩行安定性が得られるなどの必要十分な機能が備わった上に、軽く、歩きやすく作られています。
また、おしゃれな靴でもあります。
男性用
女性用
キャラバン:トレッキングシューズ C1_02S ゴアテックス
1~2泊の山小屋泊登山をメインに、日帰り登山にも出掛けようと考えている人にはこちらがおすすめです。
外側は頑丈に作られ足がしっかり保護される一方で、内側の当たりは軟らかく、足首も優しくホールドされ、動きやすく使いやすいように設計されています。
比較的安価なのも魅力です。
男女共用
ローバー:バンテージ GT WXL
日帰り登山や山小屋泊登山にも適する他、行く行くはテント泊登山にも挑戦することを考えている人にはこちらがおすすめです。
低山から森林限界を超えた岩稜帯まで幅広く活用可能なソールの硬さやグリップ力が備わっています。
アッパーがスウェードレザーと合成皮革とナイロンでできており、比較的軽いです。
男性用
女性用
シリオ:P.F. 630(男性用)、P.F. 530(女性用)
テント泊登山をメインに頻繁に登山に行こうと考えている人にはこちらがおすすめです。
重い荷物を背負っての縦走登山でも安定して歩けるだけの硬さ・丈夫さのソールやアッパーで出来ています。
アッパーがヌバックレザーで出来ていてそれなりの重さがあります。
男性用(シリオ:P.F. 630)
女性用(シリオ:P.F. 530)
スポルティバ:トランゴタワーGTX
春・夏・秋の登山にとどまらず残雪期や簡単な雪山にまで活動範囲を広げる可能性がある人にはこちらがおすすめです。
硬く安定したソールとしなやかで耐久性のあるアッパーが組み合わさった堅牢でありながら動きやすい汎用的な登山靴で、重い荷物を背負っての長時間歩行にも対応できます。
セミワンタッチ式のアイゼンが取り付けられる構造になっていますが、保温材入りではありませんので、厳冬期の雪山登山の寒さには対応できません。
男性用
女性用
あなたに最適な登山靴で楽しい登山を
登山をする際には、あなたが取り組もうとしている登山用途に合った仕様・機能・性能を有する登山靴を選ぶことが重要です。
あなたも、ここでお話ししたポイントを参考にしてあなたに最適な登山靴を選び、安全に快適に夏の登山を楽しんで下さい。
もっと広く登山靴全般について詳しく知りたい方は こちらの記事 をお読み下さい。