日帰り登山程度の少量の荷物で軽快に歩くなら、リュックの容量は20L程度で十分に間に合います。
確かに、世間では、登山入門者が最初に持つべきリュックの容量は30L程度が適すると言われているかもしれません。
ですが、中身が軽量コンパクトにまとめられるにもかかわらず、大は小を兼ねるで、無駄に容量が大きく重量も重いリュックに荷物を入れて登山に出掛けるのは考え物かもしれません。
今回は一般的な登山リュックの中では容量が最小に近い20L程度のリュックに関して、適する用途や利点および選び方と合わせておすすめを紹介いたします。
目次
20L登山リュックの用途
登山形態とそれに要する荷物を入れるのに適したリュック容量の目安との関係は次の表のとおりです。
★【 登山形態別 適したリュック容量目安 の表 】
登山形態 | 適する容量の目安 |
---|---|
日帰りの低山登山、トレッキング、ハイキング | 20 L 程度 |
日帰りの本格登山、食事付き山小屋泊登山 | 30 L 程度 |
自炊道具や食材も持参する日帰り又は山小屋素泊まり登山 | 40 L 程度 |
テント泊(自炊)登山 | 60 L 以上 |
容量20L程度の登山リュックは、日帰りの低山登山やトレッキングやハイキング等の様な、登山をする際に最低限必要な荷物だけで事足りる場合に使うのに適しています。
なぜならば、20L程度の登山リュックに収まる荷物量は、どんな登山でも省くことができない最低限の荷物量とほぼ一致するからです。
具体的には、少なくともレインウエア、水、食べ物、地図とコンパス、タオル、手袋、防寒着、ヘッドライト、トイレットペーパー、救急絆創膏などのファーストエイドキット、ツエルトやサバイバルシートなどの非常時の備え等は持って行くのではないでしょうか。
これら以上に荷物を増やす必要が無く最低限の荷物だけで十分な場合は、むやみに容量が大きいリュックを使うのは得策ではありません。
なぜならば、容量が大き過ぎれば、荷物がリュックの底の方に片寄ったり中で動いたりして背負い心地が悪くなります。
また、リュック自体の重さも重くなるため、体力を余分に要してしまい無意味だからです。
なので、必要最低限の荷物だけで済む場合は、容量20L程度の登山リュックが適します。
ですが、実際には、季節、標高、歩行時間、山中での過ごし方、雪の有無等によって防寒着、水、食べ物、調理器具、テント泊装備、雪山装備等が追加されることはあり得ます。
なので、必要最低限の荷物だけでなく更に荷物を追加する場合は、それらも入れられる容量がもっと大きいリュックが適します。
そして、必要最低限の荷物だけで済む場合でも、大は小を兼ねるで、このリュックを使い回すことはできます。
必要最低限の荷物だけで済む場合も、追加の荷物もある場合も、どちらも一つのリュックで済ませたいならば、容量20L程度のリュックは必要無いでしょう。
ですが、必要最低限の荷物だけで済む場合はそれに最適な容量のリュックを使いたいならば、あるいは、必要最低限以上の荷物を追加する見込みが無いならば、容量20L程度のリュックは必要です。
つまり、容量20L程度の登山リュックの用途は、日帰りの低山登山やトレッキングやハイキング等の、必要最低限の荷物で済ませられる場合です。
ですから、例えば山中で熱いコーヒーやスープを飲むために火器や鍋なども持って行く様な場合は20L程度では容量不足になることをご承知おき下さい。
そのような場合に使うことも想定されるなら、やはり、容量30L程度のリュックが適します。
容量30L程度のリュックにご興味がある方は こちらの記事 をお読み下さい。
20L登山リュックの利点
20L登山リュックは、
- 軽量性
- 安全性
- 快適性
- 利便性
- 収納性
- 耐久性
- 防水性
などの面で優れています。
軽量性
軽量性に優れることが20L登山リュックの最大の利点です。
なぜならば、リュックの容量が小さいことは荷物全体を軽量化するための有利な要素だからです。
どいうことかと言うと、通常、容量が小さくなる程リュック自体も小さく軽くなります。
容量20L程度のリュックは、登山リュックの中ではかなり小さいです。
そもそも容量が小さければリュック自体の重さ(外身)が軽くなります。
その上、荷物も少ししか入らないため、荷物の重さ(中身)も軽くて済みます。
つまり、外身も中身も軽いため、リュック全体の重さも軽くなるのです。
また、この軽量性と関連して、次の2つの利点も得られます。
- 腰に荷重を分散させる必要が無い
- 背面長を合わせる必要が無い
ある程度重量が重いリュックは荷重を、肩だけでなく、腰にも分散させた方が体に掛かる負担を軽減できます。
ですが、容量20L程度のリュックでは、腰にも荷重を分散させなくてもほとんど支障はありません。
なぜならば、容量20L程度のリュックではいっぱいに荷物を詰め込んでも大して重くならないため、肩だけで十分支え切れるからです。
このように、腰に荷重を分散させる必要が無いことも20L登山リュックの利点の一つです。
そしてもう一つ、ある程度容量が大きいリュックでは、背面長を合わせることも重要になります。
ですが、この点も、容量20L程度のリュックでは、背面長が合っていなくてもほとんど支障はありません。
なぜならば、上でお話しした通りリュックが大して重くないため、腰に荷重を分散させる必要が無いからです。
つまり、肩と腰に荷重を分散させて背負えるようにショルダーストラップとウエストストラップの位置関係を調節する必要が無いため、背面長を合わせる必要が無いのです。
確かに、背面長が合わないより合う方が望ましいです。
ですが、容量20L程度のリュックではそこまで対応できるように作れません。
なぜならば、容量20L程度のリュックはそもそも小さ過ぎるため、リュックの背面長を最大にしても平均的な人の背面長に達しないからです。
現実問題として支障が無いことと、物理的に難しいことの二つの理由から、背面長を合わせる必要が無いことも20L登山リュックの利点の一つです。
安全性
街使いでは余計なパーツかもしれませんが、登山リュックであれば、ほとんど全ての物にウエストストラップが付いています。
20L登山リュックでは、大型リュックほど幅広肉厚ではないこともありますが、とにかく付いていればそれで構いません。
なぜならば、ウエストストラップの機能の一つは、リュックが体から離れたり動いたりするのを防ぐことだからです。
例えば、胸の高さ辺りに張り出した木の枝の下をくぐる時のような不自然な体勢を取らざるを得ない場合に、ウエストストラップも締めてリュックを体に固定すれば安全に行動できます。
大型リュックならば荷重を腰にも分散させる機能もウエストストラップは合わせ持っています。
ですが、容量20L程度のリュックに入るだけの荷物なら、大して重くないため、荷重を腰に分散させなくても耐えられます。
そして、ウエストストラップを締める位置が本来締めるべき位置よりも高くてもリュックを体に固定することはできます。
この様に、登山リュックはウエストストラップも活用することで安全に行動できます。
安全性に優れることも20L登山リュックの利点の一つです。
快適性
リュックを背負った時に背中に接する面を「背面」と言います。
登山リュックの背面は、単なる一枚の生地ではなく、背中にフィットさせたりクッション性を保ったりかいた汗を逃がしたりできる機能が付加されています。
下の画像は、本ページで紹介している5つのリュックの背面の様子を示した物です。
登山リュックの背面には、溝のあるパッドやメッシュが使われています。
この様な作りにすることで、硬い物をパッキングしても背中に違和感を感じなくしたり、かいた汗を逃がしたりできます。
この様に、登山リュックは快適に登山できるように作られています。
快適性に優れることも登山リュックの利点の一つです。
利便性
登山リュックは、街用リュックにはあまり見られない便利な機能を備えています。
大概の登山リュックには、両サイドの底の辺りにポケットが付いていて、ここには水筒を入れるという使われ方がよくされます。
この位置のポケットはリュックを背負ったままで手が届くためとても便利です。
また、物によってはウエストストラップにポケットが付いているリュックもあり、ここもリュックを背負ったままで中味を出し入れすることができます。
また、大概の登山リュクには、両サイドにコンプレッションストラップが付いています。
コンプレッションストラップを締めることでリュックの容量を減らすことが、逆に、緩めることでリュックの容量を増やすことができます。
そして、リュックの中に入れる荷物量とリュックの容量が等しくなるように、コンプレッションストラップをいつも適切に締めて背負います。
こうすることで、リュックの容量よりも荷物が少ない場合でも、荷物が中で動いたり底に片寄ったりするのを防ぐことができます。
利便性のみならず、安全性や快適性にもつながります。
サイドポケットやコンプレッションストラップが付いていて利便性に優れることも登山リュックの利点の一つです。
収納性
登山リュックは収納機能も充実しています。
先程お話ししたサイドポケットやウエストストラップのポケットの他にも、メイン収納部の外側にも内側にも使い勝手が良くなるようにポケットが配置されています。
雨蓋式のリュックであれば、雨蓋も一つのポケットとして活用できますし、雨蓋には内ポケットも大概備わっています。
収納という表現からは外れるかもしれませんが、例えばトレッキングポールの様な、汚れや水が付いていたり中に入れてもはみ出したりする等のため、リュックの外にくくり付けて運ぶ方が適する物もあります。
この様な外部装着機能も登山リュックは備えています。
そのためのストラップやループ(輪っか)や留め具や紐の通し口等が配置されています。
例えば先程お話ししたコンプレッションストラップは、リュックの容量調節だけでなく、外部装着したい物を固定するためにも活用できます。
ポケットや外部装着機能を上手に活用して荷物を整理して適切に収納し、必要な時にはすぐに取り出したり片付けたりできるように、登山リュックは工夫して作られています。
収納性に優れることも登山リュックの利点の一つです。
耐久性
登山リュックには、耐久性が高い高強度の生地が使われています。
なぜならば、木の枝や岩などで擦っても簡単に破れないようにするためです。
耐久性に優れることも登山リュックの利点の一つです。
防水性
山の天気は変わりやすいと言われるように、突然のあるいは少々の雨に耐えられるように、登山リュックには多少の防水性能もあります。
パッと見てもわかりづらいかもしれませんが、例えば、生地がコーティングされていたり、撥水加工されていたりします。
物によってはレインカバーが付属している登山リュックもあります。
防水性に優れることも登山リュックの利点の一つです。
20L登山リュックの選び方
考慮すべき6つのチェックポイント
チェック項目 | 確認事項や満たすべき条件 |
---|---|
1.ウエストストラップ | 必須のパーツ。 どんな仕様でもとにかく付いている必要あり。 ポケットが付いていると重宝する。 |
2.背面パッド | 必須のパーツ。 背負ってみて背中にフィットし、クッション性や通気性が保てる仕様になっていること。 |
3.ポケット | サイドポケットは必須。 更に1~3箇所以上、使いやすい位置に適当な大きさのポケット(雨蓋も含む)が配置されていること。 外部装着機能が充実しているとなお良い。 |
4.コンプレッションストラップ | 必須のパーツ。 上下2本あるとなお良い。 |
5.レインカバー | 必須のパーツ。 リュックとセットで揃える必要あり。 付属していればそれでOK。付属していなければ合わせて購入する必要あり。 |
6.メイン収納部の開閉方式 | スライドファスナー式は中味を取り出しやすく、雨蓋式は多様に使えるという利点があるが、20L程度の容量なら大した影響は無く、決定的な利点にも欠点にもならない。 こだわる必要は無く、好みで決めて構わない仕様。 |
1.ウエストストラップ
ウエストストラップは必須です。
リュックを体に固定することが主目的なので、細くても薄くても構いませんが、とにかく付いている必要があります。
ウエストストラップにポケットが付いていると重宝するかもしれません。
2.背面パッド
背面パッドは必須です。
更には、背負ってみて背中にフィットし、クッション性や通気性が保てる仕様になっていることも重要です。
3.ポケット
サイドポケットは必須です。
その他にも、更にいくつかあると便利です。
4.コンプレッションストラップ
コンプレッションストラップは必須です。
上下2本ある方がベターです。
5.レインカバー
レインカバーは必須です。
付属していればそれでOKですが、付属していなければ合わせて購入する必要があります。
6.メイン収納部の開閉方式
スライドファスナー式でも雨蓋式でも、どちらでも好みで決めて下さって構いません。
スライドファスナー式は中味を取り出しやすいという利点がある一方で多様に使えないという欠点があります。
雨蓋式は中味を取り出しにくいという欠点がある一方で多様に使えるという利点があります。
ですが、20L程度の容量のリュックなら大した影響は無く、決定的な利点にも欠点にもなりません。
20L登山リュックおすすめ5選
★【 20L登山リュックおすすめ品比較表 】
メーカー: 商品名 | グレゴリー: ナノ 18 | ミレー: マルシェ 20 | ドイター: フューチュラ 23 | カリマー: タトラ 25 | コロンビア: ブルーリッジマウンテン 25L |
---|---|---|---|---|---|
容量(L) | 18 | 20 | 23 | 25 | 25 |
重量(g) | 454 | 590 | 1200 | 730 | 940 |
ウエストストラップの仕様 | 取外し/収納可 細い ポケット無し | 取外し可 細い ポケット無し | 取外し不可 幅広肉厚 ポケット無し | 取外し不可 幅広肉厚 ポケット付き | 取外し不可 幅広肉厚 ポケット付き |
背面パッド | 穴あきパッド+メッシュ | 溝付きパッド | 全面メッシュ | 溝付きパッド | 溝付きパッド |
サイドポケット付き | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
コンプレッションストラップ | 中間1本 | 上下2本 | 上下2本 | 中間1本 | 「く」の字に1本 |
レインカバー付属 | × | × | ○ | × | ○ |
メイン収納部の開閉方式 | スライドファスナー式 | スライドファスナー式 | スライドファスナー式 | 雨蓋式 | スライドファスナー式 |
特徴 | 軽量コンパクト | 街使いにも適する | 背面全面メッシュの他、高機能満載で、比較的重い | 雨蓋式で高機能な割に軽量 | 高機能な上に低価格 |
グレゴリー:ナノ 18
軽量コンパクトを志向するならばコレがおすすめです。
今回紹介している中で最小容量であることも手伝い最軽量です。
レインカバーは別売りです。
※ レインカバー
ミレー:マルシェ 20
街使いもできるデザインを重視するならばコレがおすすめです。
正面の上下に配置された大きめのポケットが収納性を高めています。
レインカバーは別売りです。
※ レインカバー
ドイター:フューチュラ 23
背面の通気性の良さを重視するならばコレがおすすめです。
登山シーンで必要になる機能が満載である反面、今回紹介している中では最も重いです。
レインカバー付きです。
カリマー:タトラ 25
雨蓋式がお好みならばコレがおすすめです。
ウエストストラップにポケットが付いているなど機能面が充実している上に比較的軽量です。
レインカバーは別売りです。
※ レインカバー
コロンビア:ブルーリッジマウンテン 25L
機能面と価格面の両立を重視するならコレがおすすめです。
ウエストストラップにポケットが付いているなど機能面が充実している上に比較的安価です。
レインカバー付きです。
20L登山リュックで身軽に登山を
一般に登山初心者が最初に持つべきリュックとしてよくすすめられるのは、容量30L程度のリュックのようです。
ですが、そこまでの容量を必要としない場合も多々あります。
荷物の軽量化を優先し過ぎて必要な荷物を持たずに登山に出掛けるのは無謀です。
ですが、状況に応じて荷物を取捨選択して、軽量コンパクトな荷物を背負って身軽に行動するのも一つの登山スタイルとしてありです。
リュックの中味だけでなく、リュック自体の重さを軽量化するのにも有効な容量20L程度のリュックを活用して、あなたも安全に快適に存分に山を楽しんで下さい。
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