登山リュックは、そもそも、
- 重い荷物を背負っても体への負担を軽減する。
- 多様な荷物を迅速・適切・容易に出し入れ・持ち運びする。
などのために適切で有効な仕様や機能を備えた、高機能で優れ物の道具です。
例えば、
- 軽量性
- 安全性
- 快適性
- 利便性
- 収納性
- 耐久性
- 防水性
などの面で、登山リュックは街用リュックよりも優れています。
その中でも、様々な条件下でオールマイティーに活用できる、最強の登山リュックの選び方と用途別のおすすめについて今回はお話しいたします。
目次
登山リュックの選び方
登山リュックを選ぶ3ステップ
- 容量を選ぶ
- 背面長(サイズ)を選ぶ
- 必要な仕様や機能が備わった物を選ぶ
ステップ1:容量を選ぶ
下に、用途別に登山リュックの適する容量の目安をお示しします。
用途 | 適する容量の目安 |
---|---|
荷物が少なめの日帰り低山登山、トレッキング、ハイキング | 20 L 程度 |
荷物が多めの日帰り本格登山、食事付き山小屋泊登山 | 30 L 程度 |
テント泊登山 | 60 L 以上 |
一口に登山と言っても、季節、標高、歩行時間、山中での過ごし方、雪の有無等によって防寒着、水、食料、調理器具、雪山装備等をどの程度持参するかも変わります。
日帰りの低山登山やトレッキングやハイキングの様な軽めの活動ならば、容量は20L程度で間に合います。
日帰りでも本格登山だったり、山中でご飯を作って楽しむ等の目的が加わると荷物が多くなり、また、食事付き山小屋泊登山も荷物量はほぼ同じで、容量30L程度がおすすめです。
テント泊登山になると、寝泊りや食事等のための荷物も加わるので、容量60L以上がおすすめです。
経験した人にしか魅力がわからない雪山テント泊にも手を出すならば、60Lでも足りないくらいです。
なので、迷ったら容量が大きめのリュックを選ぶことをおすすめします。
なぜならば、登山リュックは “大は小を兼ねる” がある程度成り立つからです。
リュックの容量に比べて荷物が少ない場合は、例えば、雨蓋を深く被せたりコンプレッションストラップを締めたりすることによって、リュック容量を絞ることができるからです。
これらのことを参考にして、あなたの登山目的や楽しみ方に合った適した容量を選んで下さい。
ステップ2:背面長(サイズ)を選ぶ
登山リュックには、容量とは別に、「背面長(サイズ)」という大きさを表す指標があります。
ちなみに容量とは、リュック内に収容できる荷物の量がどれくらいかを表す指標です。
一方、背面長(サイズ)とは、そのリュックを背負うのに適した人の背丈(胴体の長さ)がどれくらいかを表す指標です。
容量30L程度以上の場合
容量30L程度以上の場合は、あなたの背面長に合ったサイズのリュックを選ぶ必要があります。
なぜならば、容量30L程度以上のリュックはかなり重いため、荷重を肩だけで支えるのはつらいです。
そうならず荷重を腰でも支えられるようにするために、登山リュックにはウエストストラップが付き物です。
ですが、ショルダーストラップとウエストストラップの位置関係、つまり背面長が合っていないと、荷重を肩と腰に適切に分配して背負うことができないからです。
リュックの背面長はショルダーストラップの付け根からウエストストラップの下端までの長さのことで、サイズはこの長さによって決まります。
一方、人の背面長はその人の第七頚椎(あごを引いたとき首の後ろで一番出っ張っているところ)から骨盤の上端までの長さです。
両者が一致することが理想ですが、プラスマイナス5cm程度であれば許容範囲内で、ショルダーストラップの締め具合で対応できます。
物によっては背面長を変えられるリュックもあり、大容量のリュックではほとんどが背面長を変えられる仕様になっています。
このような仕様のリュックは背面長をきめ細かく調節でき、背負う人の体にフィットさせやすいです。
同じ容量のリュックでもサイズが大きくなるとそれに伴ってウエストストラップも長くなることがあります。
あなたの背面長が複数のサイズの許容範囲内に入る場合は、あなたがスリムならば小さいサイズの方を、あなたがポッチャリならば大きいサイズの方を選ぶと良いかもしれません。
容量30L程度未満の場合
容量30L程度未満の場合は、背面長を合わせることが難しいかもしれません。
なぜならば、これくらい小容量のリュックはそもそも小さ過ぎるため、リュックの背面長を最大に確保しても平均的な人の背面長に達しないからです。
ですが、これくらい小容量のリュックでは、背面長が合わなくてもほとんど支障はありません。
なぜならば、いっぱいに荷物を詰め込んでも大して重くならないため、肩だけで十分支え切れるからです。
背面長が合うに越したことはありません。
ですが、小容量リュックの背面長に合わせてあなたが小さくなるのは無理です。
小容量のリュックでは背面長(サイズ)に選択肢があるなら、あなたに最も合う物を選ぶべきです。
ですが、合わなくてもほとんど支障はありませんので、合えば儲けものくらいに考えて下さい。
ステップ3:必要な仕様や機能が備わった物を選ぶ
登山リュックを選ぶ際にチェックすべき8つのポイント
リュックという名前が付いているからには、一対のショルダーストラップがあることは当然です。
登山リュックではショルダーストラップが幅広肉厚であることが前提で、更にどの様な条件を満たせばよいかをここではお話しいたします。
リュックの容量に関係無く必須のものもあれば、小容量のリュックならば無くても支障が無いものもあります。
あなたが求めるリュック容量に合わせて選定して下さい。
チェック項目 | 確認事項や満たすべき条件 |
---|---|
1.背面パッド | 必須のパーツ。 リュック容量に関係無く背負ってみて背中にフィットし、クッション性や通気性が保てる仕様になっていること。 |
2.ウエストストラップ | 必須のパーツ。 小容量ならばどんな仕様でもとにかく付いていること。 容量30L以上ならば幅広肉厚であること。 ポケットが付いていると重宝する。 |
3.コンプレッションストラップ | 必須のパーツ。 小容量なら1本でも良いが、容量30L以上なら上下2本以上あること。 |
4.ポケット類 | サイドポケットは必須。 更に1~3箇所以上、使いやすい位置に適当な大きさのポケット(雨蓋も含む)が配置されていること。 外部装着機能が充実しているとなお良い。 |
5.レインカバー | 必須のアイテム。 リュックとセットで揃える必要あり。 付属していればそれでOK。付属していなければ合わせて購入する必要あり。 |
6.本体収納部の開閉方式 | 小容量ならスライドファスナー式でも雨蓋式でもどちらでも良い。 容量30L以上なら雨蓋式がおすすめ。 |
7.本体収納部の分割機能 | 小容量なら一気室式がおすすめ。 容量30L以上なら二気室/一気室両用式がおすすめ。 |
8.チェストストラップ | 付いているに越したことはないが、小容量なら付いていなくても構わない。 現実には、大概の登山リュックには標準装備されているし、付いていなければ後付けすることも可能。 |
1.背面パッド
リュックを背負った時に背中に接する面を「背面」と言います。
リュックの背面が単なる一枚の生地ではなく、メッシュや溝が付いたパッドが使われている物を選びます。
それによって背中へのフィット具合を増しつつ、通気性が保たれ、背中にかいた汗が逃がされ、快適に登山をすることができます。
2.ウエストストラップ
ウエストストラップが付いていることは必須条件です。
そして、容量30L以上ならば幅広肉厚である必要があります。
なぜならば、ウエストストラップは主に以下の2つの働きをするからです。
- リュックを体に固定する。
- リュックの荷重を腰でも支える。
荷物が少なくて軽い場合でも、ウエストストラップを活用してリュックを体に固定することによって、安全に快適に歩くことができます。
また、容量30L以上のリュックに荷物をいっぱいに詰め込んだら、重さは10kgを超えるでしょう。
これほどの重さのリュックを肩だけで支えるのはつらいです。
そんな時、肩だけでなく腰にも荷重を分散してリュックを支えた方が疲れにくいです。
そのためには、ウエストストラップが幅広肉厚であることが適した仕様だからです。
なので、容量30L以上のリュックならば幅広肉厚のウエストストラップが付いている必要があります。
更には、ウエストストラップにポケットが付いているとリュックを背負ったままで物を出し入れできるため重宝するかもしれません。
ですが、小容量リュックならば、どの様な仕様でも構いませんが、とにかく付いている必要があります。
なぜならば、小容量リュックでは腰に荷重を分散させなくても支障はありませんが、リュックを体に固定する必要はあるからです。
なので、小容量リュックならば仕様を問わずとにかくウエストストラップが付いている物を、容量30L以上のリュックならば幅広肉厚のウエストストラップが付いている物を選びます。
3.コンプレッションストラップ
小容量のリュックなら1本しかなくても仕方ないかもしれませんが、容量30L以上なら上下2本以上コンプレッションストラップがあることは必須条件です。
なぜならば、コンプレッションストラップは主に以下の2つの働きをしてくれるからです。
- リュックの中で荷物がむやみに動かないように容量調節する。
- 外部装着したい荷物を固定する。
リュックの容量に比べて荷物が少ない場合、そのままでは荷物がリュックの底の方に片寄ったり中で動いたりして背負い心地が悪くなります。
コンプレッションストラップを締めることで、そうならずリュックをコンパクトにすることができます。
他には、例えばトレッキングポールなどをリュックに外部装着する時、コンプレッションストラップで固定するという使い方もできます。
コンプレッションストラップは登山リュックには無くてはならないパーツです。
4.ポケット類
少なくとも両サイドの下部にポケットが付いている物がおすすめです。
なぜならば、この位置にあるポケットにはリュックを背負ったままで手が届くからです。
ここに例えば水筒を入れたりします。
先にお話ししたウエストストラップにポケットが付いていれば、ここにもリュックを背負ったままで手が届くため、ここには行動食を入れておくと良いかもしれません。
こうしておくと、リュックを背負ったままで素早く水分補給や栄養補給をすることができるからです。
他にもう一つ大きめのポケットがあると便利です。
なぜならば、本体収納部よりもポケットの方が中味を素早く出し入れできるからです。
例えば、水筒や行動食の他にも、地図とコンパス、レインカバー、ヘッドライト、山小屋泊ならば財布等は、頻繁に、あるいは必要な時すぐに取り出したいです。
なので、この様な物は、他の諸々の荷物に埋もれさせず、分けてポケットに収納できるように、他にもう一つ大きめのポケットがあると便利です。
後でお話しする雨蓋式であれば、雨蓋をそのためのポケットとして活用することができます。
なので、サイドポケットの他に1~3箇所以上、使いやすい位置や大きさのポケットがある物を選びます。
5.レインカバー
レインカバーは必須です。
なぜならば、天気が変わりやすい山中で雨に降られた場合に荷物を濡らさないようにするために必要だからです。
登山においてレインウェアが必須なのと同様です。
なのでリュックとセットで揃える必要があります。
付属していればそれでOKですが、付属していなければリュックの容量に見合う大きさのレインカバーも合わせて購入する必要があります。
6.本体収納部の開閉方式
本体収納部の開閉方式は、主に次の二つがあります。
一つはリュック正面がスライドファスナーによって逆U字形に開く方式です。
もう一つはリュック上部を巾着の様に紐で絞った上から雨蓋と言われる蓋を被せる方式です。
スライドファスナー式は中味を取り出しやすいという利点がある一方で、多様に使えず耐久性も比較的低いという欠点があります。
雨蓋式は中味(特に底の方に詰めた荷物)を取り出しにくいという欠点がある一方で、多様にも使えるし耐久性にも優れるという利点があります。
小容量リュックならスライドファスナー式でも雨蓋式でもどちらでも構いません。
なぜならば、小容量リュックはそもそも小さく入る荷物も少ないため、どちらでも、利点が決定的に有利になる訳でも欠点が決定的に不利になる訳でもないからです。
ですが、容量30L以上のリュックなら雨蓋式がおすすめです。
なぜならば、荷物が多くなると多様に使えるという雨蓋式の利点が有利に働くからです。
例えば、雨蓋式であれば、荷物が少ない時は雨蓋を深く被せ、荷物が多い時は雨蓋を浅く被せることによって、荷物の増減に柔軟に対応できます。
また、本体収納部と雨蓋の間に荷物を挟み、雨蓋で押さえるという使い方もできます。
また、雨蓋も一つの収納ユニットとして活用することができ、物によってはこれを取り外して臨時のサブバッグに転用できる物もあります。
他にも、雨蓋式は、底の方に詰めた荷物を取り出しにくいという欠点がある反面、パッキングはしやすいです。
そして、底の方に詰めた荷物もいざという時に取り出しやすいように取り出し口が他に設けられており、欠点が補われているからです。
これらの理由から、容量30L以上のリュックなら雨蓋式がおすすめです。
7.本体収納部の分割機能
容量が小さいリュックでは、本体収納部に内ポケットは付いていても、上下に仕切られてはいないと思います。
このような仕様のリュックを一気室式と呼びます。
一方、容量がある程度大きくなると、大概の登山リュックでは本体収納部を上下に仕切ることができる仕様になっています。
上部をメインコンパートメント、下部をボトムコンパートメント、この様な仕様のリュックを二気室式と呼びます。
そして、大概の二気室式登山リュックでは仕切って使うことも仕切らずに使うこともどちらもできる仕様になっています。
小容量なら一気室式がおすすめです。
なぜならば、下手に分割すると一つひとつの収納部の容積が小さくなり過ぎて、かえって使いづらいからです。
つまり、分割する意味が無いからです。
一方、容量30L以上なら二気室/一気室両用式がおすすめです。
なぜならば、二気室/一気室両用式であるということは、本体収納部の下部にも取り出し口が設けられた仕様でもあるからです。
また、二気室/一気室両用式の方が多様に使えるからです。
例えば、行動中は使わないテントや寝袋などをボトムコンパートメントに、その他の荷物をメインコンパートメントにと区別してパッキングすることもできます。
あるいは、濡れていたり汚れていたりして他の荷物と一緒にしたくない物を一番下(ボトムコンパートメント)に分けてパッキングすることもできます。
例えば、雨の中でテントを撤収せざるを得ない時、私は、テント以外の全ての荷物をメインコンパートメントにテント内でパッキングします。
その後、撤収したテントをボトムコンパートメントにパッキングするという使い方をします。
他には、同じテント場に連泊する場合、一日の行動に必要無い荷物はテント内に置いて行き、必要な荷物だけを持って行くとなると、大容量のリュックでは大き過ぎます。
そんな時、私は、二気室に分割した一方にはわざと何も入れず、もう一方と雨蓋にだけ荷物を入れて行動します。
この様な使い方ができ、利点が多いため、容量30L以上なら二気室/一気室両用式がおすすめです。
8.チェストストラップ
チェストストラップが付いているに越したことはありません。
ですが、小容量のリュックなら無くても支障ありません。
現実には、大概の登山リュックに標準装備されています。
付いていなくて必要ならば後付けすることも可能です。
なので、チェストストラップは付いていることを念のため確認する程度の位置付けで構いません。
最強登山リュックの用途別おすすめ6選
荷物が少なめの日帰り登山に適する
20Lクラスの登山リュックおすすめ2選
ミレー:マルシェ 20(男女兼用)
荷物が少なめの日帰り登山に必要な機能が備わった人気のロングセラー商品です。
街使いも可能です。
レインカバーは別売りです。
※ レインカバー
コロンビア:ブルーリッジマウンテン 25L(男女兼用)
機能面と価格面が両立された優れ物です。
レインカバーも付属しています。
ウエストストラップにポケットが付いているなど機能面が充実していながら比較的安価です。
荷物が多めの日帰り登山から山小屋泊登山に適する
30Lクラスの登山リュックおすすめ2選
ミレー:
サースフェー 30+5(男性用)
サースフェー 30+5 LD(女性用)
背負い心地や使い勝手を良くするために登山リュックに求められる仕様や機能が網羅されています。
雨蓋の位置を上下に移動させられるため、荷物の大幅な増減に対応できます。
レインカバーも付属しています。
背面長は固定式です。
★ 男性用(M,Lサイズ)
★ 女性用(Sサイズ)
オスプレー:
ケストレル38(男性用)
カイト36(女性用)
機能が豊富で様々な用途に適用可能です。
背面長可変式で、しかも2つのサイズ設定があるため、どんな体形の人にも合わせやすい商品です。
本体収納部の側面に縦方向に大きく開くスライドファスナーが付いているため、上部以外からも荷物を出し入れしやすいです。
レインカバーも付属しています。
★ ケストレル38(男性用)
★ カイト36(女性用)
テント泊登山に適する
60L以上の登山リュックおすすめ2選
ドイター:
エアコンタクト 65+10(男性用)
エアコンタクト 60+10 SL(女性用)
テント泊縦走や長期旅行などのハードな使用に耐えうる高機能・高性能商品です。
雨蓋式でありながら本体収納部の正面がU字形に大きく開く荷物の取り出し口が設けられています。
雨蓋を取り外して独立した臨時小型リュックとして使うことができます。
背面長は可変式です。
レインカバーも付属しています。
★ エアコンタクト 65+10(男性用)
★ エアコンタクト 60+10 SL(女性用)
グレゴリー:
バルトロ85(男性用)
ディバ80(女性用)
どこにでも行ける大容量でありながら背負い心地も使い勝手も良くする機能が満載です。
雨蓋式でありながら本体収納部の正面が逆U字形に大きく開く荷物の取り出し口が設けられています。
本体収納部の内ポケットを取り出して独立した臨時小型リュックとして使うことができます。
背面長は可変式です。
レインカバーも付属しています。
★ バルトロ85(男性用)
★ ディバ80(女性用)
最強登山リュックで安全登山を
登山リュックは、登山中に起きる様々な状況に適切に対処できるように設計された高機能・高性能製品です。
登山リュックは順調に登山するために必要不可欠の有用な道具です。
登山に行く季節、標高、歩行時間、山中での過ごし方、雪の有無等を考慮して、あなたの用途に適したリュックを選び、安全に快適に存分に山を楽しんで下さい。
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