せっかく高いお金を出して登山靴を買ったけど、長時間歩くと足が痛くなる、疲れる、膝が痛くなる等々の問題が生じ、インソールを替えることを検討している方もみえると思います。
インソールを替えることによって、これらの問題を解決することが可能です。
今回は、インソールを替えることによって得られる効果とともに、その効果を得るにはどの様なインソールが適しているかについてお話しいたします。
インソールの7つの役割や効果 ~インソールを替えることで何が変わるのか~
【1】フィッティング
登山靴を選ぶに当たり、先ずは、足のどの部分も靴に圧迫されない大きさの靴を選ぶはずです。
なぜならば、足の形に靴が合わず、足のどこか一箇所でも靴に当たったり擦れたりする靴を履いて山を長時間歩き続けると、足のトラブルに発展しかねないからです。
ですが、その様な大きさの靴を選ぶと、靴と足との間には隙間がありますし、その隙間も狭い所もあれば広い所もあるかもしれません。
例えば、足の指や指の付け根の辺りといった足の前寄りの部分の隙間が狭い、つまり、その辺りが窮屈に感じる場合もあるかもしれません。
その場合は、足の前寄り部分が切り取られ、かかと寄りの部分が残った4分の3タイプのインソールに替えると良いかもしれません。
あるいは、かかとの辺りの隙間が大きくてかかとがむやみに動いてしまう場合もあるかもしれません。
このような場合には、かかとの部分の厚みを増したインソールで対処するのが一つの有効な方法です。
他には、熱成型素材が使われていて、まるであなたの足の形を複製する鋳型のように、あなたの足がピッタリと収まる形に成型できるインソールもあります。
この様に、インソールを替えることによって靴をあなたの足にフィットさせることもできるのです。
【2】姿勢の補正・矯正
人間の骨格や筋肉は、厳密に見ると、保健室に置いてある標本のようにきれいに整って配列されていたり均整がとれていたりする訳ではありません。
誰でも、微妙にズレていたり偏りがあったりするものです。
例えば、真っ直ぐに立っていても左右で肩の高さが微妙に異なっていたりするのはその現れです。
始まりはほんの一箇所の僅かなズレだとしても、その状態で体を支えるために他の部分にしわ寄せが行き、不要な負担が体に掛かってしまい、疲れや痛みが出る人もいます。
この様な体の異常を、インソールによって、人体の土台とも言える足から補正することもできます。
例えば、靴底の減り具合が特徴的な人には有効な方法だと考えられます。
シューフィッターの資格を持っている店員さんがいる店で、靴とインソールと靴下をセットで合わせてもらうと改善が見込めると思います。
【3】かかとの部分の着地時の衝撃吸収
人間が歩く動作で足が着地する際には、先ず、かかと部分が着地します。
ここでの話は、かかと部分が着地をする時のことについてです。
着地時の衝撃が十分に受け止められれば、足に過剰な負担が掛からないため疲れにくくなります。
この、かかと部分が着地する時に生じる衝撃の吸収をインソールで補うこともできます。
衝撃を吸収する方法には2つのタイプが見られます。
一つは、足に備わっている衝撃吸収能力が弱まらないように補助してくれることで十分な衝撃吸収能力が得られるインソールです。
もう一つは、足に備わっている衝撃吸収能力だけでは吸収しきれない衝撃を足の代わりに吸収してくれることで十分な衝撃吸収能力が得られるインソールです。
かかとが持つ衝撃吸収能力維持の手助け
このタイプのインソールが、足のかかと部分が着地時の衝撃を吸収する能力を十二分に発揮し続けられるように補助する仕組みは次の通りです。
かかと部分が着地する時に、その衝撃で、かかと部分にある足の肉や脂肪が押し広げられて薄っペラくなってしまうのではなく、 “肉厚状態” が保たれれば衝撃吸収能力も維持できます。
そのために、かかと部分を硬めの素材でスッポリと覆うタイプのインソールです。
かかとの代わりにインソールが衝撃を吸収(クッション性)
もう一つは、インソール自体に衝撃を吸収する機能が付加されたタイプの物です。
このタイプのインソールが衝撃を吸収する仕組みは、インソールが変形する、より厳密に言うと一時的につぶれることで衝撃を吸収します。
そのために、かかと部分に軟らかい素材が組み込まれています。
【4】アーチサポート①(アーチが広がる段階=足裏部分の着地時の衝撃吸収の補助)
人間が歩く動作でかかと部分が着地した次には、足裏部分が着地します。
ここでの話は、足裏部分が着地する時のことについてです。
人間の足にはアーチがあります。
人間が歩く際、足にあるアーチは広がったり狭まったりを繰り返します。
足裏部分が着地する時は、足にあるアーチが広がる方向に変形します。
変形することによって着地する時の衝撃を吸収するのです。
ところで、偏平足の人、つまり足にあるはずのアーチの形成が不十分な人の場合、そのままでは足が衝撃を十分吸収することができません。
その様な人には、足裏の形を補正してアーチを形成してくれるインソールを使うことが有効です。
【5】アーチサポート②(アーチが狭まる段階=足が地面から浮き、前に蹴り出される際の補助)
ここでの話は、着地した足が地面から浮き、前に蹴り出される時のことについてです。
この時、足にあるアーチは狭まる方向に動きます。
アーチが狭まることに加えて、足の指は曲がる方向に動きます。
この二つの動きは、どちらも、足を前に蹴り出す推進力を生み出します。
アーチが狭まる動きをする時に働く筋肉が疲れてくると、足の推進力も弱まり、それを補おうと他の筋肉に余計な負担が掛かり、疲れが伝染して広がって行き、足の運びが悪くなります。
そうならないように、アーチが狭まる動きをインソールで補助できると疲れにくくなります。
ですから、骨折した部分をギプスで覆うかのようにガチガチに固定してしまっては、動きをかえって妨げてしまうため逆効果です。
【6】通気性
隙間を埋めたりクッション性を増したりするためにインソールの厚みが増してしまうならば、それは足裏部分の重ね着を増やすことにもなります。
登山をすると足に汗をかき靴の中や足が蒸れる人は、通気性も考慮して、通気孔があるインソールを選ぶと良いかもしれません。
【7】保温性
例えば厳冬期に雪山を登る場合に足が冷たくて辛い人は、保温性が高いインソールを使うのも一つの有効な方法です。
断熱材が組み込まれるなど寒冷対策されたインソールもあります。
3つの注意点
得られる効果は一つとは限らない
機能や性能が不十分なインソールによって引き起こされる問題点は相互に関連している物もあります。
例えば、アーチがサポートされると、それに伴い姿勢も矯正され、痛みも出ず疲れにくくなることもあります。
履き心地が悪くなる場合もある
インソールを替える目的が、例えばクッション性を増すことだけだったとします。
だとしても、靴に付属していたインソールとは異なる形状の物に替えたならば、履き心地が変わることも当然予想されます。
フィッティングを目的にしていなくても、インソールを替えることに伴って履き心地も必然的に変わり得ます。
履き心地が「変わる」とは、「良くなる」ことも「悪くなる」ことも、どちらも有り得ます。
履き心地の変化が靴紐の締め加減で調整できる範囲に留めておく必要があります。
靴下で対処できる場合もある
これまでお話ししてきた全ての役割において、一緒に履く靴や靴下との兼ね合いで、適するインソールも変わってきます。
インソールを替えることも問題の解決案の一つで、靴下を替えることによって解決する場合もあるかもしれません。
靴下のおすすめに関しては こちらの記事 を参考にして下さい。
可能であれば、そもそも靴を買う段階で、靴もインソールも靴下もセットにしてあなたの足に合う物の組合せを選ぶのが最善の方法です。
あなたに合った目的別インソールの選び方とおすすめ9選
フィッティングが目的の人には
スーパーフィート:イージーフィット
足の指からその付け根の周りの空間を広げたい人にはこちらがおすすめです。
4分の3タイプのインソールです。
クッション性や足元を安定させる機能も備わっています。
シダス:クッションプラス
熱成型が可能であなたの足の形にピッタリと合ったインソールをお望みの人にはこちらがおすすめです。
クッション性やサポート性も備えています。
トップシートには吸湿性があります。
足元の歪みの補正・矯正が目的の人には
BMZ:コンプリートスポーツ 3
足の骨格バランスを適正な状態へ近付けることを目的とし、足を構成している骨の一つである立方骨を支えることによって、足本来の機能が発揮できるように作られたインソールです。
立方骨を支えることによって得られる効果をお望みの人にはこちらがおすすめです。
足本来の機能が発揮されることにより、足首、膝、股関節、腰などの関節や筋肉の痛みの軽減が期待されます。
土踏まずがつぶれないようにサポートするタイプではありません。
通気孔があります。
スペンコ:トータルサポート マックス
足が着地する時の衝撃の一部は、足首が動くことによっても吸収されます。
その足首の動きは土踏まずの動きとも連動しているため、土踏まずが広がり過ぎる(つぶれ過ぎる)と足首も過剰に動いてしまいます。
足首がこの様に過剰に動くことを “過回内(オーバープロネーション)” と言います。
この、過回内を補正したい人にはこちらがおすすめです。
硬質素材により足裏アーチの変形を制御するとともに、クッション性能もあわせ持っています。
通気孔があります。
かかとの部分の着地時の衝撃吸収が目的の人には
スーパーフィート:グリーン
深くて硬めのヒールカップでかかと部分をスッポリと覆い、かかと部分の “肉厚状態” を保つことで、人間の足に本来備わっている衝撃吸収能力(クッション性)を得ることをお望みの人にはこちらがおすすめです。
衝撃吸収性に加えて、かかと部分やアーチをサポートし安定させる機能も備わっています。
通気孔はありません。
シダス:アウトドア3D
かかと部分に衝撃吸収体が組み込まれてクッション性が高められたインソールをお望みの人にはこちらがおすすめです。
全体のクッション性も高められています。
かかとのホールドやアーチを支える機能も備わっています。
通気孔があります。
アーチサポートが目的の人には
ショックドクター:ウルトラ2
柔軟性のある内側アーチサポートがあらゆる足に適合するインソールをお望みの人にはこちらがおすすめです。
かかとやアーチの安定化や衝撃吸収の機能も備わっています。
着地から蹴りだしまでの一連の動作をサポートし、推進力を生み出す機能も備わっています。
通気性はありません。
ザムスト:フットクラフト スタンダード(ロー、ミドル、ハイ)
アーチの高さが自分の足に合ったインソールを選びたい人にはこちらがおすすめです。
ロー、ミドル、ハイの3つから選ぶことができ、どれを選べば良いかは、こちらのメーカー公式サイト で詳しく説明されています。
説明を動画で見たい人は、こちらで見ることもできます。
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フィット性も高まり、衝撃吸収や疲労軽減も期待できます。
通気孔はありません。
保温性が目的の人には
スーパーフィート:レッドホット
寒冷対策が付加されたインソールをお望みの人にはこちらがおすすめです。
先に紹介した同社の別商品「グリーン」と同様に、深いヒールカップによって衝撃吸収性やサポート性も得られます。
通気孔はありません。
男性用モデルです。
高機能・高性能のインソールで楽しい登山を
登山とは、足に大きな負担が掛かる活動でもあります。
そのような活動において、足を痛めず、足の機能が十分に発揮されるように、高機能・高性能のインソールを活用して対処するのは有効なことです。
各社各様に、それぞれの考え方や方法で、高機能・高性能のインソールを開発し、供給してくれています。
それらの中に、あなたの状況や要求に合ったインソールがきっと見付かるはずです。
痛みも解消され疲れも軽減される高機能・高性能のインソールを活用して、より安全に快適に登山を楽しんで下さい。