登山において、レインウェアは必須と言われる一方で、荷物の軽量化も重要と言われています。
トレイルランニングやスピード登山に取り組んでいるならば、軽量化はいっそう切実なテーマでしょう。
究極の軽量化は持って行かないことかもしれませんが、そんな無謀なことをする訳にも行きません。レインウェアは雨具以外の用途に使い回すこともできる汎用品であり、持ち物から外すならレインウェアによって代用できる他の物にする方が得策です。
外すことができない持ち物ならば、少しでも軽い物を選ぶことで軽量化を実現するのが妥当です。
今回は、軽量であることを優先して作られたレインウェアのおすすめをご紹介するとともに、軽さの秘密と選ぶ際や使う際に留意すべきこと及び適した使い方についてお話しいたします。
目次
サイト運営者のイチオシ
上:ノースフェイス;ストライクトレイルフーディ
男性用→Amazonで確認
女性用→Amazonで確認
下:モンベル;バーサライトパンツ
男性用→Amazonで確認
女性用→Amazonで確認
お勧めの理由
比較的手が出しやすい価格で、必要十分な防水透湿性能を有し、最低限の機能を備えた上に、軽量性を優先して選んだのがこの商品です。
適した人
防寒対策までは必要の無い季節や標高の山に行く場合や、他の装備で防寒対策が可能な場合で、トレイルランニングやスピード登山のような荷物の軽量化を重視していて、もしもの時にすぐに安全な場所に到着できる人。
軽量レインウェアはなぜ軽いか、及びそのために注意(妥協)しなけらばならないこと
パーツが省かれている
軽量レインウェアは、一般的なレインウェアと比べると、商品によって省かれているパーツや残されているパーツに違いはあるものの、パーツが省かれています。
重量を減らす対処方法の一つが、パーツを減らすことなのです。
例えば、ポケットが無かったり、襟が無かったり、ファスナーを覆うフラップが無かったり、裾や袖口がゴムシャーリングだけでドローコードやベルクロが無かったりというような具合です。
多少の使い勝手や機能性を落として軽量化を実現しているとも言えます。
ポケットは内側に着ている他の衣類に付いているもので間に合わせるとか、フードは襟内部に収納せずに出しっ放しでも良しとするとか、ファスナー部分から多少の水が侵入して来ても我慢するとか、裾や袖口の締め付け具合の調節はできなくても仕方ないという割り切りが必要になります。
作りがタイト
重量を減らす手段の一つとして、使う生地の量も少なくされています。その結果出来上がった製品は、作りがタイトになっています。そこまで考慮せずにサイズ選びをすると、細くて窮屈に感じるかもしれません。
通常、レインウェアは、雨具としてのみならず、防風着や防寒着として使い回すことも可能です。軽量化を最優先しないならば、保温性の高いフリースやダウンを内側に着ることも想定して、ゆったり目のサイズの物を選ぶのか得策です。
しかし、ゆったり目にするということは、軽量化とは逆行します。軽量化を最優先するならば、内側に何かを着たアウターとして着るという使い方は手放す必要に迫られるかもしれません。
生地が軽い
軽量レインウェアは、また、一般的なレインウェアよりも生地そのものの重さが軽いです。
重量減を、メインパーツとも言える生地の、量のみならず質においても軽くすることで実現している訳です。
生地を軽くするために、厚みが可能な限り薄くなっています。あるいは、3層構造ではなく2層構造の生地が使われたりもします。
登山用のレインウェアに使われる生地は、軽量性に特化しなければ、一般的に、表地と防水透湿性素材と裏地の3つの素材を貼り合せることによって作られる、3層構造になっている物が多く使われています。
表地には、軽量性に特化していないと数十デニールの布がよく使われますが、軽量モデルでは十デニールに満たない布が使われたりもします。ちなみに、“デニール”とは布を作るのに使われている“糸の太さ”の指標で、大雑把に言うと、数値の大きさと布の厚みは比例します。
3層構造ではなく2層構造とは、裏地が無く、表地と防水透湿性素材を貼り合せただけの生地である場合が多いです。あるいは、物によっては、表地が無く、防水透湿性素材と裏地を貼り合せただけの生地で作られたレインウェアもあります。
いずれにしても、生地が薄いために、軽量化に特化していない製品に比べると耐久性は劣ります。生地の強度が比較的低かったり、摩擦による損傷が比較的起こり易かったりします。
生地が薄いことに伴い、保温性も低下します。だからと言って防寒対策として内側に重ね着するレイヤーで補おうとしても、先程述べた通り、作りがタイトであるためそれは難しいです。
軽量レインウェアは防水機能付きのウインドブレーカー程度の位置付けにして、防寒対策は別のウェアで対処するという発想を求められることになるかもしれません。
軽量レインウェアは、これらの可能性を認識した上で使う必要があります。
軽量レインウェアの適用範囲
軽量性に特化したレインウェアは、そうでない物に比べると、パーツが省かれていたり生地が薄かったりで、機能や性能や使い勝手などが制限されてしまいます。なので、限られた使用条件や適用範囲や用途で使うことになります。
制限されているとは言いましたが、登山用レインウェアの前提である防水透湿性能は十分にありますし、軽量であることも一つの性能であり最大の利点です。この利点から得られる恩恵を存分に活用するのが上手な利用方法です。
具体的には、トレイルランニングやスピード登山のような短時間で完了させる用途で使うのに適したアイテムと言えます。
また、多少蒸れたり濡れたりすることも想定しておくべきです。そうなっても低体温症で行動不能にならずに済むよう、夏の低山に限って使うとか、そうなる前に安全な場所にたどり着ける山に限って使うのにとどめておくべきです。
おすすめ2選
おすすめの2選をご紹介いたします。
比較表
ノースフェイス;ストライクトレイル フーディ、パンツ | モンベル;バーサライト ジャケット、パンツ | |
---|---|---|
重量: 上 | 115g | 134g |
重量: 下 | 125g | 83g |
重量:合計 | 240g | 217g |
生地構成:表地 | 7Dナイロン | 10Dナイロン |
生地構成:防水透湿膜 | ハイベント | ゴアテックス |
生地構成:裏地 | ナイロン | なし |
耐水圧(mm) | 20,000 | 30,000以上 |
透湿度(g/m2・24hr) | 40,000 | 43,000 |
ポケット | なし | なし |
襟 | なし | なし |
フードの調節機能 | ゴムシャーリングによる固定式(調節不可) | 顔面の周囲、頭部の奥行き、ひさしの深さの3箇所を調節可能 |
袖口の調節機能 | ゴムシャーリングによる固定式(調節不可) | ベルクロにて調節可能 |
ジャケットの裾の調節機能 | ゴムシャーリングによる固定式(調節不可) | ドローコードにて調節可能 |
パンツの裾のサイドファスナー | 裾から膝まで 止水ファスナー付き | なし |
特長、 特記事項 | パンツの腰周りにベンチレーションあり。 パンツのウエストは紐で調節可能。 | ジャケットの肩や腰など負荷が掛かる部分の縫製箇所を減らす生地のカットパターンにより、防水性・軽量性・耐久性を実現している。 |
ノースフェイス;ストライクトレイルフーディ(115g)、ストライクトレイルパンツ(125g)
3層構造の生地を使いつつも軽量性を実現しており、パーツが省かれていながらも使い勝手は程々に良い。
モンベル;バーサライトジャケット(134g)、バーサライトパンツ(83g)
フィット具合を調節する機能を多く残しつつも軽量化を実現したジャケットと、最軽量級のパンツ。
軽量化を意識しつつ機能性を重視するならば
最初に、サイト運営者のイチオシということで、上はノースフェイスのストライクトレイルフーディを、下はモンベルのバーサライトパンツをお勧めいたしました。比較的手が出しやすい価格の商品で軽量であることを優先して選ぶと、このような組合せになります。
しかし、機能性もある程度重視するならば、上はモンベルのバーサライトジャケットの方が、下はノースフェイスのストライクトレイルパンツの方が機能性は優れています。イチオシとは上下逆の組合せになります。
上に関して言えば、モンベルのバーサライトジャケットであれば、フードや裾や袖口のフィット具合を調節する機能があります。ノースフェイスのストライクトレイルフーディにはこの調節機能は無く、全て固定式です。
下に関しては、ノースフェイスのストライクトレイルパンツであれば、裾から膝までサイドファスナーが付いているため、靴を履いたままでのパンツの着脱が容易です。
ジャケットの開口部のフィット具合の調節機能も重視するならばモンベルのバーサライトジャケットを、パンツの着脱の容易さも重視するならばノースフェイスのストライクトレイルパンツを選択するのもありです。
適材適所の使い方を
軽量性を優先したレインウェアにおいては、軽量化を実現するために、パーツが省かれていたり、作りがタイトになっていたり、薄くて軽い生地が使われていたりします。それに伴い、軽量化の恩恵にあずかれる一方で、譲歩せねばならないことも出て来ます。
軽量レインウェアだからこそできることや有利な点も、軽量レインウェアではできないことや不利な点も、どちらもよく認識して、行く先や使い方に合った装備を選択して下さい。
「軽い!」ということは一つの大きな利点であり武器です。
荷物が軽ければ、体力の消耗を防ぐことができたり、行程をスピーディーに進行できたり、長距離や長時間の行動が可能になったりします。荷物が軽いに越したことはありません。
この特長を存分に活用して、楽しく有意義で満足の行く登山を楽しんで下さい。