登山をするに当たってレインウェアは必携品。お試し体験ではなく本格的に始めるなら、レインウェアもそれに見合う高機能高性能品が必要なこともわかっている。でも、それなりの山道具一式を揃えようとすると、出費も相当な額に上る。今回は、レインウェアに関しては実績も信頼も一番のゴアテックスに限定して、その中で安い商品を紹介いたします。
目次
想定
ご存じの通り、レインウェアの機能や性能にはレベルがあります。登山では、時に過酷な環境の下で大きな負荷のかかる運動をします。レインウェアは、雨具としてのみならず、防風着や防寒着のアウターという使い方もします。3000m級の高山の稜線歩き中に風雨にさらされたり、少々の雪山に出掛ける場合にも実用に耐え得るレインウェアという想定で話を進めさせていただきます。
そうなると、やはり、ゴアテックス採用モデルであれば間違いはありません。ゴアテックス採用モデルの中から選ぶという考え方で合っていると思います。ゴアテックス採用モデルであるということを、商品を選ぶ条件の一つに固定いたします。ゴアテックスにも種類がありますし、レインウェアのメーカーも発売されている商品の種類も一つではありません。それらの中で、他よりも高い物は最初から除外して、安い値段設定の物を選定いたしました。
ゴアテックスの特長(長所・良い所・優れている所)
登山用のレインウェアを買うに当たっては、「迷ったらゴアテックスを選べば間違いない」と言われるほどです。先ずは、その根拠をおさらいしておきましょう。
登山においてレインウェアには、外側からの雨水の侵入を防ぐだけでなく内側でかいた汗を水蒸気として放出する、という一見相反するかのような機能のどちらもが、つまり防水透湿性が求められます。ゴアテックスはこの防水性も透湿性もどちらも優れているだけでなく、防風性もあり、軽く、しかも耐久性もあるという、とても優れたありがたい素材なのです。
ちなみに、ゴアテックスとは、素材メーカーであるアメリカのW.L.ゴア・アンド・アソシエイツ社(以後、「ゴア社」と記述)が製造販売する防水透湿性素材の商標名です。
最先発メーカーとしての実績と信頼
防水透湿性という無理難題を登山の実用レベルで最初に解決したのがゴアテックスです。ゴアテックスは、当初は、防水透湿性素材の代名詞にもなっていた程で、今でも、最も有名であり信頼性があります。
その信頼性の要因の一つとしては、言うなれば一日の長があるということも挙げられると思います。発売当初から今日に至るまで、長い間、登山者の要求に応え続けてきた実績や、豊富なノウハウや知見や経験の蓄積が信頼につながっていると思います。なので、ゴアテックスの中から選ぶというあなたの方針は合っていると思います。
他のアウトドアメーカーも独自に防水透湿性素材を開発して商品化しています。部分的な性能ではゴアテックスを上回る物もありますが、総合的にゴアテックスを上回る性能を持つ素材がなかなか開発されていないこともゴアテックスの強みの一つと思われます。
素材として優れているということが、ゴアテックスが選ばれる理由の一つです。
では、どのように優れているかについて、次から順番にお話しいたします。
防水性
例えば、土砂降りの雨の中をナイロン傘をさして歩いていたら、雨水が生地の内側まで浸み込んで来た、という経験はありませんか。
生地がどの程度の激しい雨でも防いでくれるか(防水性)の指標として「耐水圧」というものがあります。耐水圧とは、生地にかける水圧を高めて行っても、水が生地に浸み込まず耐えられる性能のことです。一般的なナイロン傘の耐水圧は500程度と言われています。
求められる耐水圧の目安は、
小雨 ・・・・ 300
大雨 ・・・・ 10,000
嵐 ・・・・・・ 20,000
とされているのに対して、ゴアテックスの耐水圧は50,000です。登山という使用条件においても十分な性能を持っています。
透湿性
登山とは、重い荷物を背負って自分の脚で、時には手の力も使って坂道を上り下りする、負荷の大きな運動です。当然、大量の汗をかきます。レインウェアが、外からの雨の侵入は防いでくれたとしても、かいた汗を外に逃がしてくれなければ、内側は蒸れて、結局はビショビショに濡れてしまいます。そうならないように、防水性と同時に、かいた汗を外側に逃がす機能もレインウェアには求められます。透湿性とはこの機能のことです。
透湿性の指標となるのが透湿度です。登山をするに当たっては、透湿度は、最低でも10,000以上あることが望ましいとされているのに対して、ゴアテックスの透湿度は25,000~98,000あります。透湿性においても、登山という使用条件で十分な性能を持っています。
防風性
ゴアテックスという素材は、雨だけでなく、風も防いでくれます。雨が降っていなくても、風が強い日や、森林限界よりも上や稜線まで登り、強風にさらされるような所を歩く場合には、ウインドブレーカーとしても活躍してくれます。
防寒着
名前はレインウェアかもしれませんが、防寒着として、あるいは内側にフリースなどを重ね着したアウターとして使うこともできます。
軽量
軽量であることもゴアテックスという素材の優れた点の一つです。
ゴアテックスが現れる前のレインウェアはゴム引きの防水布が使われていました。それと比べるとゴアテックスははるかに軽量です。荷物が軽いということは、登山をするに当たってはとても重要な要素であり利点です。
耐久性
ゴアテックス以前の素材であるゴム引きの防水布に比べて耐久性が高いこともゴアテックスが優れている点の一つです。尖った物に当たったり引っ掛かったりして穴が開くとか、破れるとかしない限り、長年使っている間に劣化して生地から水が浸み込んで来ることはまずありません。
製品作りにも関与
ゴア社は素材メーカーなのですが、そうでありながら製品作りにも関与しています。素材の性能のみならず、出来上がった製品の品質にも厳しい基準を設けています。このこともゴアテックスが信頼される一因となっています。
例えば、ウェアの構造にもゴア社が関与しています。生地そのものは確かに水を通さないとしても、例えば袖口のような開口部をきちんと閉じることができなければ、そこから結局雨水が侵入して中が濡れてしまいます。これでは、レインウェアとしては不合格であり、ゴア社は、この点もクリアできて初めて防水と考えています。
なので、アウトドアメーカーが作った発売前のサンプルをマネキンに着せて、上から雨を一定時間当て、中が濡れていないかをゴア社がテストします。そして、首元や裾などから雨が浸入しない作りになっているかなど、ゴア社の品質検査に合格して初めてゴアテックスブランドと認められ、販売できるようになります。つまり、製品としての完成度が高いということもゴアテックスが選ばれる要因の一つなのです。
考慮すべきこと
これからお話しすることの中には、そんなことはわかり切っていると思うこともあるかもしれませんが、確認の意味も含めて、頭の片隅に置いておいていただきたいことを述べさせていただきます。
上下セパレートタイプを上下とも
登山を本格的にしようと考えているなら、これは言うまでもないことです。
ゴアテックスに限定してレインウェアを探しているあなたには、今更改めて言うまでも無いことだとは思いますが、話の前提を合わせる意味でも、念のためお話しさせていただきました。
登山用品専門メーカーの商品
先程、「製品作りにも関与」の項で、出来上がった製品に対してまでもゴア社が責任を持っていることをお話しいたしました。ですから、ゴアテックス採用モデルの中から選ぶというあなたの考え自体はそれで構いません。性能は十分にあります。ですが、機能面では、登山用品専門メーカーが作った商品か、登山用品が専門ではないメーカーが別のジャンルに使うことを想定(優先)して作った商品かでは、登山という用途で使う場合の使い勝手が違ってきます。
例えば、ジャケットの両脇ポケットの下端は、裾の位置よりも少し上にとどめてあります。これは、容量がある程度大きいザックには普通に付いているウエストストラップを絞めても、ポケットが圧迫されないようにするための設計です。
また、例えば、パンツのサイドジッパーは足首の位置よりもはるか上にまで開くようになっているはずです。これは、通常よりもゴツくて大きい登山靴を履いたままで、素早く楽に着脱できるようにするための工夫です。
登山用品専門メーカーが作った商品には、登山で使うことを前提にした細かい配慮が商品に反映されているので、使い勝手が良いのです。
レインウェア以外の使い途
先に「防風性」や「防寒着」という性能にも言及した通りで、 “レインウェアは雨が降っている時しか着てはいけない” という決まりはありません。防寒防風着として使うこともあります。内側に保温性の高いミドルレイヤーを重ね着したアウターとして使うことも想定して、大きめのサイズの物を選びましょう
登山以外の場面での使い途
先の「レインウェア以外の使い途」の項で言及した他にも、 “登山用のレインウェアは登山の時しか使ってはいけない” という決まりもありません。
登山という過酷な環境の下で負荷の大きな活動をする場合でも実用に耐え得る機能や性能がある優れ物です。他の場面でならなおさらのこと十分な性能があります。普段、下界で、雨の日や風が強い時や寒い季節に外出する際も活用して下さい。ゴアテックスの中では安いとしても、それなりに高いお金を払って手に入れた物です。使ってこそ初めて価値が有ります。頻繁に使う方がコストパフォーマンスも上がります。山へ行かない時は部屋の片隅で眠らせているのではもったいないです。
登山用ですから、街用にデザインされた物を使うよりも快適で満足度が高いはずです。ひょっとしたら不快な事態が起こらないためにそれに気付かず、街用の物を着た時に登山用の物には及ばない性能に初めて気付くかもしれません。
メンテナンス方法(高性能を維持する、寿命を延ばす)
どんな物でも、それが持つ機能や性能を存分に発揮させ末永く使い続けるためには、メンテナンスが必要です。メンテナンスが不十分であるがために性能が低下してしまっては、せっかくのゴアテックスの恩恵が十分に得られず、わざわざゴアテックスを選んだ意味が無くなってしまいます。メンテナンスをするからこそ、高性能も維持できます。また、適切にメンテナンスするからこそ、新し物に買い替える必要が生じず、出費が発生することも避けることができます。
では、どのようにメンテナンスするのが有効か、次から順番にお話しいたします。
洗濯
素材が特殊なため扱い方がわからないかもしれませんが、まめに洗濯して構いません。普段着ている服と同様で、汚れが付いたらもちろんのこと、目に見えた汚れが付いていなくても登山で着れば当然汗をかきますので、着たら毎回洗うのが良いです。洗濯機で洗って大丈夫です。
洗濯する際は、基本的に商品のタグに記されている洗濯表示に従います。
ただし、注意点がいくつかあります。
ファスナーやベルクロ類は全て閉じて洗濯機に入れます。
一般的な家庭用洗濯洗剤を使用して大丈夫ですが、柔軟剤も一緒に入っている洗剤は不可です。柔軟剤だけでなく漂白剤なども入れずに、洗剤だけを入れます。
普段着る服を洗濯する場合よりも、すすぎ回数は増やし、脱水時間は短くします。
洗濯が終わったら、しっかりと陰干しして下さい。
ちなみに、外側が汚れていたり洗剤が残っていたりすると、表地の撥水性能が下がります。撥水性能が下がると、雨水が表地に浸み込んでしまい、レインウェアが水の膜で部分的に覆われた状態になってしまいます。この水がレインウェアの中まで侵入することはゴアテックスの膜が防いでくれるので、防水性能が低下する訳ではありません。ですが、ゴアテックスの膜に開いている微細な孔が塞がれてしまうために、結果として透湿性能が下がります。またウェアが重くなり動きづらくなりますし冷えにもつながりかねません。
内側も汗や皮脂などにより汚れます。この汚れや湿気はシームテープの剥離を引き起こします。
ですから、レインウェアの性能をフルに発揮させるためには、きちんと洗ってよくすすぎしっかり乾かすことが大切なのです。
撥水性回復
洗濯によっても撥水性は回復しますが、撥水性を更に回復させる方法があります。アイロンや乾燥機やヘアードライヤーで熱をかけるのです。
アイロンなら、スチーム無しで、当て布を当てた上から低温(80~120℃)でアイロンを当てます。
乾燥機なら20分ほど温風乾燥します。
ヘアードライヤーなら10cm程離してまんべんなく熱をかけます。
熱をかけても撥水性の回復が不十分な場合は、撥水スプレーをかけます。
保管方法
下山してレインウェアを脱いだら湿ったまま収納袋に入れて保管というのはよろしくありません。
洗濯して乾かしたらハンガーに吊るして、直射日光や高温多湿を避けて保管しましょう。
おすすめ2選
いくら安いとは言え、ゴアテックスが使われた商品ですから、それなりのお値段になってしまいます。30,000円くらいになってしまうことはご了承下さい。
登山メーカーが設計し、ゴア社のテストにも合格している商品ですから、機能も性能も使い勝手も合格レベルです。そんな厳選の2品をご紹介いたします。
比較表
表の中の「生地構造」と「表地」に関する細かい説明は省略させていただきます。お伝えしたいことは、「どちらも同じ」ということです。
機能的、性能的に大差は無いと考えて良いと思います。サイズが合うものの中から気に入った色の物を選べば良いと思います。
メーカー、商品名 | プロモンテ、ゴアテックス レインスーツ | モンベル、レインダンサー ジャケット+パンツ |
生地構造 | 3レイヤー | 3レイヤー |
表地 | 50Dナイロンリップストップ | 50Dナイロンリップストップ |
フードの収納 | 襟内に収納 | 丸めてまとめる(ロールアップフード) |
フードのフィット具合調節 | 顔面の周囲、頭部の奥行(2箇所) | 顔面の周囲、頭部の奥行、ひさしの深さ(3箇所) |
メーカーのセールスポイント | ファッション性より機能性重視 極力縫製の少ないパターン 襟付き | ややゆとりのあるシルエット 運動性を高める独自のパターン、立体裁断(肘) ウエストサイズはそのまま、パンツの股下長を選べる |
プロモンテ、ゴアテックス レインスーツ
メンズ → https://www.amazon.co.jp/%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%A2%E3%83%B3%E3%83%86-PuroMonte-%E3%83%AC%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%83%BC%E3%83%84-%E3%82%B4%E3%82%A2%E3%83%86%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9%E7%B4%A0%E6%9D%90%E4%BD%BF%E7%94%A8-SR136M/dp/B07DH5F81G/ref=sr_1_8?dchild=1&hvadid=414690197031&hvdev=c&jp-ad-ap=0&keywords=%E3%83%AC%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%82%A2%2Bgoretex&qid=1595583803&sr=8-8&tag=yahhyd-22&th=1
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モンベル、レインダンサー ジャケット+パンツ
メンズ ジャケット → https://www.amazon.co.jp/%E3%83%A2%E3%83%B3%E3%83%99%E3%83%AB-mont-bell-%E3%83%AC%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%80%E3%83%B3%E3%82%B5%E3%83%BC-%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%82%B1%E3%83%83%E3%83%88-1128340/dp/B07WS28RNV/ref=sr_1_6?__mk_ja_JP=%E3%82%AB%E3%82%BF%E3%82%AB%E3%83%8A&crid=DYMRR6YAVNFQ&dchild=1&keywords=%E3%83%A2%E3%83%B3%E3%83%99%E3%83%AB+%E3%83%AC%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%80%E3%83%B3%E3%82%B5%E3%83%BC&qid=1595599376&s=apparel&sprefix=%E3%83%A2%E3%83%B3%E3%83%99%E3%83%AB%E3%80%80%E3%83%AC%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%80%E3%83%B3%E3%82%B5%E3%83%BC%2Capparel%2C358&sr=1-6
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レインウェアにゴアテックスを選ぶのは賢い選択
登山の必需品とも言えるレインウエアにゴアテックスを選べば、雨具としてだけでなく、防寒防風着としても使えますし、登山以外の場面でも使うことができます。活用する機会が多い有用なアイテムですから、しっかりメンテナンスもして存分に末永く愛用して下さい。