登山はほとんどの人にとって非日常的な活動のはずです。
例えば水泳をする時には水着を着るように、登山をする場合にも適した服装があるだろうということは薄々感じているけど、登山に行く機会や経験が少なければ、それが具体的に何であるかにまでは、なかなか想像が及ばないのではないでしょうか。
“山” という屋内や街中とは異なる状況や環境の下でも安全で快適に過ごせる服装として、何に気を付け何を考慮して選べば良いか、今回はそんな話を、手始めに夏山を想定してお話しいたします。
目次
街中や下界よりもはるかに多様で過酷な環境
外的要因
登山という活動を行なう場は、ほとんどが大自然の真っただ中ですから普段の生活環境に比べ変動幅も大きく、また急激に変わったりもします。
そして、山ですから、標高が高い分、気温は低くなります。
例えば、山に入る前、街中では日中35℃を超える猛暑日でも、山に入ると、標高2,500mを超えるテント場や山小屋では朝晩10℃以下に冷え込むこともあります。
一日の気温差が25℃もあるということはなかなか無いのではないでしょうか。
ある程度標高が低い林の中では穏やかで過ごしやすいかもしれませんが、森林限界を超えたり稜線に出ると、それまで遮られていた風雨や陽射し(紫外線)にまともにさらされたりします。
内的要因
登山は、街中のようには舗装されていない坂道を重い荷物を背負って登る、それなりにハードな運動です。
熱も発生しますし汗もかきます。
動くとすぐ暑くなり止まるとすぐ寒くなる、ということもあります。
人間の恒常性なる身体機能だけで対応できる範囲を超えた部分は、服装を調節して対処することになります。
その対処の仕方も、いつも決まって何か一つの服を脱ぐか着るかして済ませるというワンパターンの対処方法では追いつきません。
もっときめ細かい調節が適切で有効でかつ必要になります。
考えてみれば、寒暖差に対して服装を調節して対処することは、登山をする時だけの特別なことではありません。
朝晩と昼間で、あるいは夏と冬で服装が異なるというのは日常的に普通にあります。
それと同じことです。
ただ、登山という大自然の中にさらされる活動をする際には、日常よりも、もっと小まめにきめ細かい調節が必要になるということです。
原形は三層重ね着(レイヤリング)
状況に応じて加減する
先にお話しした、山の多様で過酷な環境には、ベースレイヤー、ミドルレイヤー、アウターレイヤーの三つのレイヤー(層)を適切に駆使して対処します。
ちなみに、「層」と「レイヤー」は同じ意味です。日本語か英語かの違いです。
ところで、原形は三層重ね着と申しましたが、常時必ずこの三つのレイヤーを一枚ずつ着るという意味ではありません。状況に応じて加減します。
三つとも着るのは防寒、防風、防水の必要がある場面です。
不要と判断すれば脱ぎます。必要なら更に重ね着します。
実際、風も強くなく雨も降っていない行動中は、多くの人がアウターは着ずに歩いています。
あまりお勧めしませんが、極端な場合、ミドルも脱いでしまいベースだけ着て歩くという選択肢が無い訳ではありません。
逆に、休憩中や朝夕にテント場で食事をする時などは、行動中の服装の上にミドルやアウターを更に重ね着して過ごしたりします。
アウターの中にミドルを二枚重ね着することもあります。
暑かったり行動中は薄着になるのに対して、寒かったり風が強かったり休憩で止まった時などはその上に重ね着します。
状況に応じて着たり脱いだりして調節する訳です。
例えばサッカーで、冬に、ベンチにいる控え選手が温かいガウンを羽織っていても、交代出場に備えてウォーミングアップが進んだり、いよいよ交代出場する時にはガウンを脱いだり、逆に、交代で退いた選手がガウンを羽織ることと同じです。
山でも、出発するまでや休憩中は、体が冷えるのを防ぐために、行動中よりも余分に服を着て凌ぎますが、これから出発という時や、ウォーミングアップを兼ねてしばらく歩き体が温まってきたら、適度に熱を発散するように、余分に来ていた服を脱ぎます。
アウターを着る程寒い訳ではなくても、雨が降れば、防水機能も備えたアウター(つまりレインウェア)を着ることになります。
このように、山では小まめにきめ細かい服装の調節が必要になるのです。
また、山では、大量に汗をかこうが、少しぐらい汚れようが、よっぽどで無ければ着替えません。
と言うか、着替えることを極力せずに済ませます。
入山してから下山するまでずっと、肌着はもちろん行動着も同じもので通すことがほとんどです。
マラソンや駅伝のような長距離ランナーが、競技中は着替えないのと同じです。
山では、「着干し(きぼし)」と言って、着ている服が濡れても、そのまま着続けて着たままで乾かしてしまうということをします。
それを可能にする製品を選び、着て行くのです。
とは言え、念のためその「よっぽど」に備えて、着替えを実際には持って行きます。
それでは、これらベースレイヤー、ミドルレイヤー、アウターレイヤーの三層それぞれにどのような機能や役割を持たせ、どのように使い分けるかをこれから説明いたします。
ベースレイヤー(アンダーウェア、肌着)・・・・吸汗速乾
ここでお話しするベースレイヤーとは、肌着や下着(アンダーウェア)と言う方が馴染みが深いかもしれません。
少なくとも体幹の肌に直接身に着ける物です。
冬は上半身も長袖、下半身も足首までのロングタイプを着ますが、夏ならショートタイプで、上半身は半袖、下半身はブリーフやトランクスで良いでしょう。
ベースレイヤーの機能や役割は、かいた汗を吸収して素早く発散し、肌を快適な状態に保つことです。
吸汗速乾性が求められます。例えばポリエステル素材のような速乾性の物を選んで下さい。
普段ならよく着ているかもしれない木綿は、肌触りも良く吸汗性もありますが、速乾性が無いので論外です。
濡れると肌に貼り付いて動きづらいだけでなく、場合によっては低体温症を誘引することにもなりかねず大変危険です。
木綿のTシャツやジーンズは、登山で着る服の選択肢からは除外して下さい。
ベースレイヤーは濡れても体に貼りついたり寒さを感じたりしにくい、濡れによる影響を受けにくい素材である必要があります。
おすすめ
夏ならば、こちらの製品で良いでしょう。
ベースは上は半袖で良いでしょう。
→モンベル ジオライン L.W. Tシャツ Men’s
軽量で速乾性に優れているので、寒い季節の激しく汗をかく運動や、夏場のウォータースポーツなど、オールシーズン活躍する汎用性の高い半袖モデルです。
また、薄手で、伸縮性にも優れ、重ね着がしやすくなっています。
下は、ブリーフ派なら
→モンベル ジオライン L.W. ブリーフ Men’s
優れた吸水拡散性や速乾性を備え、発汗量の多いアクティビティに最適なトランクスです。
トランクス派なら
→モンベル ジオライン L.W. トランクス Men’s
優れた吸水拡散性や速乾性を備え、発汗量の多いアクティビティに最適なトランクスです。
ミドルレイヤー(中間着、行動着)・・・・汗や熱の発散、保温、肌の保護
山を歩いている時、アウターを着ない場合も多くあります。
ミドルとは、肌からの距離や着る順番が中間であることを意味します。
ミドルですから、ベースとアウターの間に挟まれた状態で要求される役割を果たすことを目的に着る訳ですが、アウターを着ていない時は、ミドルがアウターの役割も結果的に果たしていることになります。
ミドルは、ベースが吸い上げた汗と共に熱を発散・放出させる役割も、逆に空気の層を作り熱を保つ役割も果たします。
ミドルは、相反する意外と酷な要求にも応えてくれている訳です。
また、肌の上を一枚を覆っている訳ですから、肌を保護する役割も、結果的に、果たしてくれています。
こちらの機能は、発散や保温の機能のように、その製品の特長として別段うたわれていなくても備わっていますのでご安心下さい。
ただし、これは製品を選ぶ段階ではなく使う時の問題なのですが、暑いから・動きづらいからと言って、袖や裾をまくって歩くことはお勧めいたしません。
山では、と言うより標高が高くなると、目安としては一般的に標高が1000m高くなると紫外線は約10%増加するとされているので、下界よりも強烈な紫外線によって、気付かないうちにひどい日焼けをしてしまうことにもなりかねません。
また、植物や岩で引っ掛けたり擦れたり過って転んでしまった時に、肌がむき出しになっていると肌を擦りむいてしまうなど大きなダメージを受けかねません。
ですから、長袖・長ズボンをお勧めします。
そして袖や裾はまくらず、肌が確実に覆われる着方をしましょう。
同様に、首元も直射日光にさらされて暑かったり、逆に強風などで寒かったりする場合に、襟を立てて凌ぐこともあります。
ですから、首元の辺りも覆うことができるように、襟付きの物をお勧めします。
ミドルに適したものは、一つはいわゆる山シャツというものです。
ボタン式前開きチェック柄の長袖シャツで、胸ポケットが、左右どちらにも、合計二つ付いているものが多いので二つのポケットが重宝するかもしれません。
一方で、生地が織り布なので、編み布(ニット)と比べると伸縮性や動きやすさの点で劣るかもしれません。
胸ポケット二つにこだわらないならニットの製品という選択肢もあります。
ポケットが二つあるニットの製品を私は見たことがありませんが、ニットの方が伸縮性があり動きやすいです。
お好みでお選び下さい。
おすすめ
生地の伸縮性よりもポケット重視なら、
→モンベル WIC.ライト ロングスリーブシャツ Men’s
柔らかい肌触りの薄手の素材を使用したシャツです。
高い通気性とUVカット効果を備え、日差しの強いフィールドでも快適です。
ポケットよりも生地の伸縮性重視なら
→モンベル WIC.ラガーシャツ ロングスリーブ Men’s
柔らかな肌触りで消臭効果も備える長袖ラガーシャツです。
吸水拡散性やUVカット効果にも優れ、炎天下のアクティビティでも快適な着心地です。
アウターレイヤー・・・・防寒、防風、防水、透湿
アウターとは、その名の通り一番外側に着用するもので、悪天候時や気象条件の厳し中で強風や雨、雪、寒さなどから体を守るものです。
ですから、アウターに求められる機能や役割は防寒、防風、防水なのですが、
その一方で、汗をかいたときベースレイヤー、ミドルレイヤーから渡された水蒸気を外に逃がす役割も必要なため、透湿性があることも重要です。
アウターとして最も頻繁に用いられているのはレインウェアだと思います。
名前はレインウェアですが、雨が降っていない時にレインウェアを着てはいけないという決まりはありません。
防寒や防風を目的に着ることもあります。登山で着るレインウェアは防水透湿性の物を用います。
レインウェアは一着で何役もこなす、用途の広いアウターなのです。
おすすめ
以下の製品は、求められる機能性能がどちらも備わっています。
両者を比べて、比較的耐久性が高く価格が安いものは
→モンベル レインダンサー
優れた機能をバランスよく備えたスタンダードモデルです。
ややゆとりのあるシルエットなので、厚みのある中間着の上にも着用しやすくなっています。
ゴアテックス ファブリクスを使用したモデルとして、最もリーズナブルな価格を実現しています。
比較的軽量コンパクトで着心地が良いものは
→モンベル ストームクルーザー
卓越した防水性・透湿性、そして軽量性。
全てを備えた究極のレインウエアがストームクルーザーです。
縫製箇所を極限まで減らす独自のパターンと、しなやかな着心地を生み出すGORE® C-ニット™バッカーテクノロジーにより、かつてない着心地のよさを実現しました。
すっきりとした無駄のないシルエットで、ウインドブレーカーや防寒着としても活躍します。
他にも靴下、手袋、帽子、サングラス等も大切な装備です。
これらについてはまた別のページでお話しさせていただきます。
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